参院選での歴史的惨敗を受け、石破茂首相は続投の意向を示した。しかし、党内からは異論が噴出。1955年の「保守合同」以来、数々の危機を乗り越えてきた自民党だが、今回の再起は危ぶまれる。党内では「高市早苗首相待望論」がにわかに浮上し、今後の政局の焦点となっている。
参院選での与党惨敗:過去にない過半数割れ
自民・公明両党は、昨年10月の衆院選に続き、今回の参院選でさらに悲惨な結果となった。石破首相が掲げた「自公で過半数(125議席)」という勝敗ラインは、非改選議席75を含め、わずか50議席の獲得で達成できる「大甘」な目標だった。これは過去の首相も設定してきたもので、通常は容易にクリアされる水準である。
しかし、蓋を開けてみれば、自民党は39議席、公明党は8議席と計47議席にとどまり、目標をクリアできなかった。自民党は1989年や2007年の参院選でも「記録的な惨敗」を経験したが、衆参両院で与党が過半数を割るという前例のない事態は、自民党にとって最大の危機とされている。
高市早苗氏待望論の台頭と複雑な背景
参院選当初から、与党関係者の間では「高市早苗氏が首相ならば、ここまで劣勢にはならなかった」との声が聞かれた。昨年9月の自民党総裁選で、高市氏は1回目投票トップ(181票)も、決選投票で石破氏(215票)に敗れたのは、岸田前首相や菅義偉元首相らの石破氏支持が影響したためだ。
石破首相誕生の背景には、裏金問題で清和政策研究会(旧安倍派)など党内派閥が疲弊していたことがある。派閥領袖でなく、清和会からも遠い石破氏が適任と見なされた。また、自民党の女性候補当選者の割合が9.9%と他党に比べ著しく低い点も、女性がトップになりにくい党の体質を浮き彫りにする。
現在、高市首相待望論が沸き起こるのは、参院選大敗による党内の深刻な危機意識のためだ。「所得税減税で国民民主党と近い高市氏をトップに据え、国民民主と組むしかない」との声も挙がり、「103万円の壁」引き上げ賛成の姿勢が高市氏への期待を高めている。
自民党総裁選立候補表明の会見に臨む高市早苗氏
参院選の壊滅的敗北は、自民党を未曾有の危機に陥れた。石破首相の続投意向は、党内の異論とリーダーシップへの疑問を呼んでいる。高市早苗氏の待望論は、党の改革と新たな政治的連携への期待を反映しており、今後の自民党及び日本政治の行方に大きな影響を与えることは必至だ。