1980年代後半から1990年代にかけてのバブル経済期、日本全国の海沿いやスキー場周辺では、会員制リゾートホテルや別荘地、タワーマンションなど、数多くのリゾート施設が開発されました。しかし、その多くは現在、入居者の減少や老朽化が進み、維持管理が困難な「廃墟」と化している物件も少なくありません。不動産情報サイトでは、驚くほど安価な、時には100万円を切る価格で売り出されているリゾート物件が見られますが、これらを購入し、本当に豊かな生活を送ることは可能なのでしょうか。実際に海沿いの別荘で生活する作家でYouTuberの吉川祐介氏に、その実態と隠されたリスクについて話を聞きました。
「超激安物件」の裏に潜む高額な維持費
一見すると、新潟県湯沢町のような温泉やプール、ジム施設まで完備されたリゾートマンションが数十万円で手に入ると聞けば、「タダ同然」に感じられるかもしれません。しかし、吉川氏は「それは高い」と即座に否定します。過去数年でリモートワークの普及により、バブル期に建造されたリゾートマンションへの注目は高まり、一時期10万円程度で販売されていた物件も価格が上昇傾向にありますが、それでも都心の物件と比較すれば破格であることに変わりはありません。しかし、その安さの裏には計り知れない維持費が隠されているのです。
購入費用がたとえ50万円であっても、毎月発生する管理費や修繕積立金は5万円を超えることが一般的です。特に温泉やスポーツジムなどの共用施設が充実している物件ほど、その費用は高額になります。さらに、固定資産税も毎年課税されます。多くの激安リゾートマンションは、入居者が極めて少なく、管理費や修繕積立金が十分に集まらない状況にあります。その結果、建物の維持管理が困難になり、雨漏りなどの問題が発生しても、ブルーシートで覆うなどの応急処置しかできないといった事態に陥っているケースが後を絶ちません。
危険な「激安リゾート物件」を見分ける3つの条件
吉川氏によると、購入を避けるべき危険な激安リゾートマンションには、主に以下の3つの条件がそろっていると言います。これらが当てはまる物件は、現在でも10万円台で販売されていることがあります。
- 築年数が古い: バブル期に建てられた物件は築30年以上が経過しており、構造上の問題や設備の老朽化が深刻な場合があります。
- 管理費が高い: 物件価格が安くても、管理費が不自然に高い場合は注意が必要です。これは、共用施設の維持費が高額であるか、または入居者が少ないために一人当たりの負担が増している可能性を示唆しています。
- ベランダがない: ベランダがない物件は、エアコンの室外機すら設置できない構造上の制約がある場合があります。これは住環境の快適性を著しく損なうだけでなく、将来的な売却の際にも大きなマイナス要因となります。
栃木県日光市のファミテックNIKKO明神新館。かつて会員制ホテルとして販売されたが、現在は廃墟となり、心霊スポットとしても知られている。
見せかけの安さに惑わされない賢い判断を
一見魅力的な「超激安」リゾートマンションですが、その価格だけを見て安易に購入を決断することは極めて危険です。購入後の高額な維持費、老朽化による修繕の困難さ、そして入居者不足による管理組合の機能不全など、様々なリスクが隠されています。リモートワークの普及で地方移住や二拠点生活への関心が高まる中、このような物件に魅力を感じる人もいるかもしれませんが、物件の築年数、管理費の高さ、そして住環境の利便性を慎重に確認することが不可欠です。見せかけの安さに惑わされず、長期的な視点と専門家の意見を参考に、賢明な不動産購入の判断を下すことが求められます。
茨城県鉾田市(旧大洋村)に広がる海沿いの別荘地。バブル期に開発されたリゾート物件の典型例であり、海岸に面した区画が多く見られる。
参考文献: