フランスのマクロン大統領、パレスチナ国家承認を表明:イスラエル指導者らが「テロへの報奨」と猛反発

フランスのエマニュエル・マクロン大統領が9月に米ニューヨークで開催される国連総会でパレスチナを正式に国家承認すると表明したことを受け、イスラエル側の指導者たちから激しい反発の声が上がっています。このフランスの動きは、長年の係争地域における国家の地位を巡る国際的な議論に新たな波紋を広げています。

パレスチナ国旗が国連教育科学文化機関(ユネスコ)本部に掲揚される様子(パリ、2011年)パレスチナ国旗が国連教育科学文化機関(ユネスコ)本部に掲揚される様子(パリ、2011年)

イスラエル首相:「テロへの報奨」と国家存亡の危機を警告

ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、マクロン大統領の決定を「テロへの報奨」であると強く非難しました。首相は、この承認がイスラエルの国家存亡の危機をもたらし、イスラエルを「消滅させるための足掛かり」になりかねないと警告しています。さらに首相は、「パレスチナ人が求めているのはイスラエルと併存する国家ではない。イスラエルに取って代わる国家を求めているのだ」と述べ、パレスチナ側の真意に疑問を呈しました。

主要閣僚からの強い批判

イスラエル政府の主要閣僚からも、フランスの決定に対する厳しい批判が相次ぎました。ギドン・サール外相は、「パレスチナ国家は(イスラム組織)ハマスの国家になるだろう」と述べ、2023年にイスラエルを攻撃しガザ地区での紛争のきっかけを作ったハマスの影響下に入る可能性を指摘しました。

ヤリブ・レビン副首相兼法相は、マクロン大統領の決定を「テロへの直接的な支援」であり、「フランスの歴史に汚点を残す」ものだと批判的な見解を示しました。また、イスラエル・カッツ国防相は、「われわれの安全保障を損なうパレスチナ国家の樹立は認めない」と明言し、安全保障上の懸念を強調しました。

扇動的な発言で知られるベツァレル・スモトリッチ財務相は、フランスの発表はイスラエルにとって1967年から占領しているパレスチナ自治区ヨルダン川西岸を併合する「もう一つの理由」を与え、「テロリストのパレスチナ国家という危険な幻想に完全に終止符を打つ」ものだと述べました。

クネセトの決定と野党指導者の見解

イスラエル国会(クネセト)は、フランスの発表に先立つ23日に、政府に対しヨルダン川西岸の併合を求める法的拘束力のない動議を可決していました。これは、長年にわたり極右勢力が求めてきた併合への動きを支持するものです。

野党の指導者らもマクロン大統領の決定を厳しく批判しています。ナフタリ・ベネット元首相は自身のX(旧ツイッター)で、マクロン大統領の行動を「モラル崩壊」の兆候であり、「歴史のごみ箱に捨てられるだろう」と投稿しました。

旧ソ連からの移民を中心に結成され、パレスチナとの分離を目指す極右政党「わが家イスラエル」のアビグドール・リーベルマン党首もXに、「パレスチナの国家承認はテロへの報奨であり、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)以来最も恐ろしいユダヤ人虐殺を実行した組織であるハマスを勇気づけるものだ」と投稿し、承認がハマスの活動を助長するとの懸念を示しました。

アミハイ・シクリ・ディアスポラ・反ユダヤ主義闘争相は、ネットで拡散されているマクロン大統領が妻のブリジット氏に顔を押しのけられているように見える画像をXに投稿し、「エマニュエル・マクロン大統領、イスラエル政府を代表して、パレスチナの国家承認に対するわれわれの回答をここに示す」とコメントするなど、皮肉を交えた反発もみられました。

まとめ

フランスのマクロン大統領によるパレスチナ国家承認の表明は、国際社会においてパレスチナの地位を巡る新たな局面を迎えつつあることを示しています。しかし、イスラエルの指導者層からは、これを「テロへの報奨」とみなし、自国の安全保障と存亡に関わる重大な脅威と捉える猛烈な反発が噴出しています。特に、ヨルダン川西岸の併合を求める動きが強まる中でのフランスの決定は、中東地域の緊張をさらに高める可能性を秘めています。この国際的な対立は、今後の国連総会における議論や、イスラエル・パレスチナ間の和平交渉にどのような影響を与えるか、引き続き注目されます。


参照元:

  • AFPBB News
  • Yahoo!ニュース