韓国観光:中国依存からの脱却と外国人誘致の課題

韓国の観光業界は、中国人団体観光客、通称「游客」の受け入れ再開に向けて活発な準備を進めています。今年7月から9月期に予定されている中国人向けノービザ観光の許可が目前に迫っており、この期待感の背景には、2017年のTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備に対する報復措置として導入された「限韓令」により、中国人観光客が前年比で383万人も減少したという苦い経験があります。当時、観光業界全体はもちろん、明洞などの小規模事業者までもが深刻な打撃を受けました。今回の措置により、中国人観光客の需要が過去の水準まで回復すれば、業界全体に再び活気が戻るという切実な願いがあるのです。しかし、特定の国による報復的措置一つで観光産業全体が揺らぐという構造は、果たして持続可能と言えるでしょうか。

済州島の新羅免税店前に集まる中国人団体観光客。韓国観光における中国依存の現状を示す済州島の新羅免税店前に集まる中国人団体観光客。韓国観光における中国依存の現状を示す

アジア圏への過度な依存と隠れた問題点

韓国を訪れる外国人観光客の大多数はアジア系です。地理的な近接性に加え、韓流の影響力が最初に広がったのが中国、東南アジア、中央アジアといった地域だったことがその主な理由です。2024年時点のデータを見ても、外国人観光客の81%がこれらの地域から来ており、その比重は非常に大きいままです。一方で、同じ時期にアジア以外の国々、特に米国や欧州からの観光客が2014年と比べて約100万人も増加しているという注目すべき変化も見られます。これは、もはや発展途上国の旅行者が周辺の文化強国を訪れるだけでなく、遠く離れた文化先進国の観光客が韓国を訪れるケースが増えていることを示唆しています。

欧米人観光客増加の兆しと再訪問率の低さ

欧米からの観光客増加は喜ばしい傾向であるものの、詳細なデータを見ると楽観視できない状況が浮き彫りになります。文化体育観光部の「外来観光客調査」によると、昨年韓国を訪れた外国人観光客全体の再訪問率は54.7%でした。ところが、米国(42%)はもちろん、英国(40.2%)、ドイツ(33.1%)、フランス(30.7%)といった主要先進国からの観光客の再訪問率は、平均をかなり下回っています。これらの欧米からの旅行者は、中国人観光客とは異なり、95%以上が個人旅行の形を好みます。しかし、道に迷ったり、必要な観光情報にスムーズにアクセスできなかったりと、繰り返し不便を感じているのが現状です。韓国の観光案内インフラに問題があることはもちろんですが、より根本的な原因として、Googleマップが韓国で正常に機能しないことが挙げられます。主要先進国の観光客が国内外の旅行で最も頻繁に利用するアプリが使えない状況では、円滑な観光体験は難しいと言わざるを得ません。

Googleマップ制限が示す構造的な問題

Googleマップが韓国で制限されている理由としては、安全保障上の論理がしばしば持ち出されますが、実際にはこれは国内の地図サービス産業を保護するための、長年にわたる貿易障壁に近いものと指摘されています。かつて発展途上にあった国内IT産業が、Googleのようなグローバル巨大企業に市場を奪われるのを防ごうという、当時の「愛国心」が背景にあったのです。しかし、現在では国産の地図アプリがすでに確固たる寡占状態を維持しており、さらに韓国は巨大IT企業と対等に渡り合える「ソブリンAI」を開発できる実力すら備えています。このような古い規制は、もはや国内産業を保護するどころか、中国人団体観光客への依存という脆弱な観光構造を固定化させてしまっている側面があります。

今後の韓国観光が目指すべき方向性

今後、韓国の観光業が特定の国からの報復措置に振り回されることなく、持続可能な発展を遂げるためには、抜本的な改革が必要です。その一つが、Googleマップの利用制限を緩和することです。これにより、個人旅行を好む欧米からの観光客の利便性が大幅に向上し、再訪問率の向上にも繋がるでしょう。加えて、ベジタリアンやハラールに対応したメニュー表示を普及させるなど、多様な文化背景を持つ外国人に親和的な観光環境を積極的に整備していく必要があります。これは、観光産業の構造的な脆弱性を克服し、より多様な客層を呼び込むための重要なステップとなります。

結論

韓国観光業界は、中国人団体観光客の再誘致に大きな期待を寄せていますが、同時に特定の国への過度な依存がもたらすリスクも認識すべきです。欧米からの観光客が増加している現状を踏まえ、彼らが快適に旅行できる環境を整備することが、今後の韓国観光の持続可能な成長に不可欠です。Googleマップの制限解除や、食の多様性への対応など、古い規制や不便を解消し、真に外国人にとって魅力的な観光地へと変革していくことが、韓国観光の未来を切り拓く鍵となるでしょう。


参考文献: