特区民泊と「経営・管理ビザ」の盲点:大阪で加速する中国人の日本移住と民泊投資の裏側

近年、大阪を中心に「特区民泊」制度を足掛かりに日本へ移住する中国人が増加の一途を辿っています。この現象の背景には、日本の「特区民泊」制度と「経営・管理ビザ」における制度の穴が存在すると指摘されています。本稿では、地元住民の間で高まる警戒感と、住宅地で進行する深刻な社会問題、そしてその裏にある投資構造を深掘りします。

日本に移住する中国人の増加を示唆する都市景観のイメージ。特区民泊や経営・管理ビザ制度の課題を象徴。日本に移住する中国人の増加を示唆する都市景観のイメージ。特区民泊や経営・管理ビザ制度の課題を象徴。

地域住民に広がる警戒とトラブルの質的変化

観光地理学と現代中国研究を専門とする阪南大学国際学部の松村嘉久教授は、大阪市内の駅に近い住宅地で民泊の実態調査を行っていた際、住宅地図を手に路地を歩いているだけで、鋭い目つきの住民に「おたくは誰? また、民泊をつくろうとしているのか?」と詰め寄られたといいます。教授は「よく中国系の不動産屋と間違われます。『ウチも狙われているんじゃないか』と、借家の住民たちはかなり警戒しているようです」と語ります。

これまでの民泊トラブルは、宿泊者の騒音やゴミ出しのルール違反が主なものでした。しかし、現在大阪で進行している事態は、それらとは比較にならないほど深刻な「居住問題」へと質的に変化しています。

住宅からの「立ち退き」と「家賃高騰」の現実

松村教授によると、「突然、借家の住民に対して『所有者が代わりました。出て行ってください』と通告したり、出ていかない場合は家賃を一方的に値上げしたりして、追い出しを図るケースが多々あるのです」と説明します。実際に、東京・板橋区にある築40年の賃貸マンションでは、オーナーが中国人に変更された後、家賃を2.5倍以上に引き上げる通知が届いた事例が報じられました(この値上げは後に撤回されています)。

背景には、中国系のデベロッパーや傘下の不動産会社が、既存の借家を積極的に買い取る動きがあります。住民を追い出した後、住宅を民泊向けに大規模に改装したり、あるいは更地にして1棟丸ごと「民泊マンション」を続々と建設したりといった手法がとられています。松村教授は、「借家の住民は単身の高齢者も多く、裁判には長い時間と費用がかかるため、結局泣き寝入りするほかないのが現状です。立ち退きをめぐって裁判になったという話は、まだ聞いたことがありません」と、弱い立場の住民が直面する困難を指摘します。

民泊物件売却で莫大な利益を生むビジネスモデル

バブル期の「地上げ」を彷彿とさせる強引な手法ですが、なぜ中国系デベロッパーはそこまでして住民を追い出しにかかるのでしょうか。松村教授は、「住宅や土地を手に入れて、民泊物件をつくって中国人に販売すれば、確実に儲かるからです」と語ります。現在、中国国内では、日本での民泊経営が、高利回りの不動産投資として非常に注目を集めているのです。この収益性の高さが、強引な手段に訴えてでも物件を確保しようとする背景にあると考えられます。

このように、「特区民泊」制度や「経営・管理ビザ」の運用における抜け穴が、日本の住宅地における「居住」と「投資」のバランスを崩し、一部地域で深刻な社会問題を引き起こしています。外国人観光客誘致の側面がある一方で、地元住民の生活が脅かされる現状は、今後の政策立案において重要な検討課題となるでしょう。

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