2025年7月6日深夜、浜松市の歓楽街で発生したガールズバー店員刺殺事件は、世間に大きな衝撃を与えました。山下市郎容疑者(41)が竹内朋香さん(27)と伊藤凛さん(26)の2人を殺害したこの凄惨な事件は、犯行態様の残忍さだけでなく、事件前の容疑者の不審な行動が「計画的犯行」の可能性を強く示唆しているとして注目を集めています。本記事では、新たに判明した防犯カメラ映像の詳細や、事件直前の容疑者の不可解な行動に関する証言を基に、事件の背景に迫ります。
凄惨な事件の全貌と新たな防犯カメラ映像
事件は殺傷能力の高い「ククリナイフ」が凶器として使われ、被害者の遺体には複数の致命傷が確認されるなど、強烈な殺意が顕在化したものでした。事件発生から約3週間後、ニュースポストセブンの取材班が現地で入手した新たな防犯カメラ映像は、犯行直前の生々しい一部始終を捉えていました。
浜松ガールズバー事件の山下市郎容疑者と伊藤凛さんが歓楽街を歩く防犯カメラ映像の一部。男は凶器を隠し持っている。
事件当日の午前0時54分過ぎ、キャップを後ろ向きに被った山下容疑者がカメラの横を通過。隣にはワンピース姿の伊藤さんがぴったりと寄り添い歩いていました。一見すると凶器は見当たりませんが、男の右手には布のようなもので覆い隠された何かが携えられていたといいます。テレビ局報道部記者によると、山下容疑者は犯行時、両手にククリナイフを持って2人を襲撃しており、防犯カメラの映像からは、店に向かう道中でタオルなどでナイフを隠していたことが見て取れます。この映像が捉えられてからわずか約1分後には、「やめて、なんで!」「ぎゃあー!!」という悲鳴が響き渡り、直後に「警察、警察!」と助けを求める声が確認されました。犯行はまさに“一瞬の出来事”だったことが浮き彫りになっています。警察発表によれば、伊藤さんは事件の2日ほど前から山下容疑者と行動を共にし、音信不通だったとされています。
容疑者の事件前の不可解な行動
今回の取材では、事件の数日前から山下容疑者が不審な行動をしていたことを示す証言も得られました。浜松市千歳町にあるフィリピンパブの従業員は、事件の3日前の午後9時頃、山下容疑者が友人の男と共に現場のガールズバー近くの駐車場に車を停め、周囲の様子を窺っていたと証言しています。当初、従業員は自身の店に何か因縁があるのかと警戒したものの、今にして思えば、その奥にあるガールズバーを下見していたのではないかと語り、寒気がしたと述べています。
さらに、その前日にも山下容疑者は一人で街を徘徊していたといいます。キャッチとして声をかけたという別の従業員は、「ヤツは目立つから忘れない。見た目もニュースのままで、タトゥーにサングラス、キャップ姿だった」と証言。声をかけると手であしらわれ、そのままガールズバーの方へ向かっていったとのことです。これらの証言は、山下容疑者が数日前から犯行の「下見」をしていた可能性を示唆しています。また、事件が報じられた後、「強い者にはへこへこし、弱い者にはオラオラだった」という容疑者の人物像が報じられましたが、彼と一度だけ店で飲んだことがあるというガールズバーの店員も、この報道を裏付ける証言をしています。その際、山下容疑者は後輩らしき人物を連れてきて、豪華なロレックスを見せびらかしたり、後輩にタバコの火をつけさせたりするなど、威張った態度を取っていたといいます。
「計画的犯行」の可能性を深める証言
山下容疑者は殺害されたガールズバーの常連客だったとされていますが、事件の数日前も平然と飲み歩いていたという証言は、単なる偶然では片付けられない不審な行動です。これらの証言は、今回の事件が周到に練られた「計画的犯行」であったという見立てを一層強めるものです。山下容疑者がバーの周辺を徘徊し、状況を観察していたとすれば、その行動は明確な意図に基づいていたと考えられます。
事件発生からすでに一か月が経過しましたが、被害者の知人たちからは今も深い悲しみと悼む声が上がっています。真相の解明と、事件が与えた衝撃の大きさを改めて認識する上で、こうした事件前の容疑者の行動の詳細が重要視されています。