近年、日本では婚姻数の減少が社会問題となっていますが、その背景には「男性の年収」が深く関わっているという現実があります。結婚は単なる感情の結びつきだけでなく、経済的な基盤の上に成り立つ生活であり、特に男性にとっては、年収が結婚の成否を左右する重要な要素となっていることが各種データから明らかになっています。未婚の男性が直面するこの「残酷な現実」は、日本の社会構造と経済状況を色濃く反映していると言えるでしょう。
結婚における「男性の年収」の重要性
現代の結婚において、男性の年収がどれほど重要視されているかは、公的な調査からも明確に読み取れます。2024年にこども家庭庁が実施した「若者のライフデザインや出会いに関する意識調査」によると、25〜34歳の未婚女性の77.2%、同年代の既婚女性に至っては81.7%が「夫の年収は自分より高い方が望ましい」と回答しています。これは、女性が結婚相手を選ぶ際に、男性の経済力を非常に重視している紛れもない事実を示しています。
結婚生活は、出産や育児を考えた場合、一時的に妻が休業したり退職したりする可能性を考慮に入れると、夫一人の収入に依存する期間が生じることも少なくありません。そのため、女性は将来的な家計の安定を見据え、結婚相手の経済力をシビアに評価する傾向にあります。この視点から見ても、「男性の年収」が結婚において極めて重要な位置を占めることは、経済生活としての結婚の本質的な側面と言えるでしょう。
結婚と経済的負担に直面するカップル
婚姻減少の本質:中間層男性の課題
男性の年収と未婚率の間には明確な相関関係が見られます。2022年就業構造基本調査のデータは、その厳しさを浮き彫りにしています。例えば、30〜39歳の男性で年収700万円以上の層では未婚率が2割を切る一方で、年収200万円未満の層では7割を超える未婚率となっています。このデータは、男性の場合、年収が低くなればなるほど結婚が困難になるという「お金の問題」が、結婚の可否に直結していることを示唆しています。
しかし、現在の婚姻減少の本質的な問題は、貧困層が結婚できなくなったことだけではありません。より深刻なのは、かつては結婚が当たり前だった人口ボリュームの大きい「年収中間層」の男性が、結婚できなくなっていることにあります。もし中間層の男性が依然として安定して結婚できているのであれば、これほどまでの婚姻減少には繋がらなかったはずです。
「年収300万円台では結婚できない」といった声がSNSやネット記事で散見されますが、300万や400万という絶対的な金額だけで語ることは、地域ごとの年収分布の違いを考慮するとあまり意味がありません。全国的な傾向を正確に捉えるためには、その地域の「中央値年収」に対する未婚率、いわば「中央値年収未婚率」で分析する視点が必要です。これにより、より実態に即した結婚の障壁を理解し、対策を講じる手助けとなるでしょう。
結婚における男性の年収の重要性は、単なる経済的な豊かさ以上の意味を持っています。それは、安定した家庭生活への期待、そして子どもを育てる上での基盤としての役割を強く認識されているからです。婚姻減少という社会課題の解決には、男性の年収問題、特に中間層の経済的安定性を深く掘り下げ、地域差を考慮した多角的なアプローチが不可欠と言えるでしょう。
参考文献
- こども家庭庁「若者のライフデザインや出会いに関する意識調査」(2024年)
- 総務省統計局「就業構造基本調査」(2022年)