インド南部の野生動物公園から絶滅危惧種のアジアゾウ4頭が日本へ空輸されたことに対し、自然保護活動家や動物専門家から懸念の声が上がっています。長距離の移動がゾウたちの健康に深刻な影響を与える可能性があり、また今回の国際的な動物交換の真の目的についても疑問が呈されています。
インドから日本への長距離輸送:ゾウたちの健康懸念
先週、3頭の雌と1頭の雄のアジアゾウは、特別製のクレート(輸送用木箱)に入れられ、貨物機で約12時間かけて大阪の関西国際空港に到着しました。これらのゾウは、ベンガルール(旧バンガロール)にあるバナーガッタ生物公園(BBP)から兵庫県姫路市の姫路セントラルパークへと移送され、今後そこで飼育される予定です。
この輸送には、動物交換という背景があります。日刊紙ニュー・インディアン・エクスプレスによると、バナーガッタ生物公園はゾウ4頭の見返りに、チーター4頭、ジャガー4頭、ピューマ4頭、チンパンジー3頭、クロクモザル8頭を受け取ると報じられています。
これに対し、野生生物学者で自然保護活動家のラビ・チェラム氏は強く非難の声を上げています。彼は、野生動物公園はその土地に固有の動物のみを飼育すべきだと主張し、「ゾウは日本原産ではなく、ベンガルールに持ち込まれると報じられているジャガーやチーターもカルナタカ州原産ではない。この国際的な動物交換の目的を明確にすることが重要だ」と述べています。
インド南部の森に生息する野生のアジアゾウの群れ。絶滅危惧種であるゾウの健康と保護の重要性を象徴する。
動物園の役割と野生生物保全への課題
世界自然保護基金(WWF)によると、野生のアジアゾウの推定個体数は現在5万頭未満であり、その大半はインドに生息しています。絶滅危惧種である彼らの健康への配慮は、保全活動において極めて重要です。
インドでは過去にも、ナレンドラ・モディ首相が支援するプロジェクトの一環として、ナミビアと南アフリカから合計20頭のチーターが移送されました。これは、70年前に狩猟によってインドで絶滅したチーターを再導入する試みでしたが、数頭が早期に死んだことで、この注目されたプロジェクトの有効性には疑問符がついています。
チェラム氏は、現代の動物園は単に動物を「展示する」だけの場所ではないと強調しています。彼は、「現代の動物園は、教育、保全、研究、そしてレクリエーションという明確な目的を持つべきだ。動物園は、これらの目的を達成できるような方法で計画的に飼育動物を集めなければならない」と指摘し、動物交換の倫理と目的の透明性を求めています。
このゾウの輸送は、絶滅危惧種の保護と、国際的な動物交換における動物福祉のあり方について、改めて議論を提起しています。長距離輸送がゾウたちに与えるストレスや健康リスクは無視できず、動物園が果たすべき真の役割が問われています。