ポルトガル急進右派政党「シェーガ」の台頭:既存政治への不満と日本「参政党」との共通点

「日本人ファースト」を掲げ、参議院選挙で議席を伸ばした日本の参政党。その動きを先取るかのような現象が、遠く離れたポルトガルで起きている。極右・ポピュリストと評される新興政党「シェーガ」が、わずか3年余りで国会での議席を5倍に増やし、今年5月の総選挙では第2党へと急成長を遂げた。既存政党への不信感、そして移民政策を巡る不満といった共通の受け皿を狙う新興政党の台頭は、日本の参政党とも重なる部分が多い。

ポルトガルに吹く「もうたくさん」の風:シェーガ党の誕生と躍進

今年7月上旬、ポルトガルの首都リスボンにある国会の隣接地では、「ポルトガルを救うため、シェーガに投票を」とポルトガル語で書かれた巨大な看板が目を引いた。党名「シェーガ」は「もうたくさん」を意味する言葉であり、既存政治への人々の不満と、新興政党が持つ勢いとが鮮明に示されていた。

ポルトガル議会隣に立つ、党首アンドレ・ベントゥーラ氏の写真と「ポルトガルを救うためにシェーガに投票を」と記された巨大なシェーガ党の看板。ポルトガル議会隣に立つ、党首アンドレ・ベントゥーラ氏の写真と「ポルトガルを救うためにシェーガに投票を」と記された巨大なシェーガ党の看板。

シェーガ党は、キリスト教カトリックの司祭見習いやサッカー解説者などの経歴を持つアンドレ・ベントゥーラ氏(42歳)によって2019年に創設された。中道右派の社会民主党で活動していた彼は、既存政党に対する人々の根深い不満を肌で感じ取り、新党の立ち上げを決意したという。

シェーガ党は、2019年10月の議会選挙(一院制、定数230)でベントゥーラ氏が初めて議席を獲得して以来、その勢力を急速に拡大させている。2022年には12議席、2024年には50議席と選挙ごとに躍進を続け、2025年5月の総選挙ではついに60議席を獲得し、堂々の第2党に躍り出た。これは1974年の独裁体制崩壊以来、中道右派の社会民主党と中道左派の社会党という二大政党が主導してきたポルトガルの政局に、文字通り風穴を開ける出来事となった。

既存政治への不満と「移民」「汚職」への訴え

当時のロイター通信は、このポルトガル総選挙の結果を「極右が台頭、与党は過半数届かず」という見出しで報じた。この見出しは、まさに日本の参議院選挙の結果を連想させるものだった。

シェーガ党が有権者の強い共鳴を得た背景には、彼らが特に力を入れる二つの問題、「移民」と「汚職」との戦いがある。同党のジョアン・グラーサ議員は、リスボンの国会内にある豪華な会派応接室で、「我々が力を入れているのは『移民』と『汚職』との戦いだ。これに有権者は共鳴した」と分析する。長年解決されない移民問題や、既存政治に対する汚職への不満が、シェーガ党への支持を後押しした形だ。

結論

ポルトガルの「シェーガ」の急速な台頭は、既存政治への不満と、特定の問題に焦点を当てた新しい政治勢力への期待が、世界各地で高まっていることを示唆している。日本の参政党の躍進と重ね合わせることで、この国際的な政治変動の潮流をより深く理解することができるだろう。今後も、このような新興政党の動向は、各国の政治情勢に大きな影響を与え続けるとみられ、その展開が注目される。

参考文献