カンボジア政府がドナルド・トランプ米大統領をノーベル平和賞に推薦する方針を固めたことが、ロイター通信によって報じられた。この動きは、タイとの長引く国境地帯での軍事衝突の停戦をトランプ氏が仲介したことが主な理由とされている。トランプ氏にとって、これは過去に複数の国から受けた推薦に続くものとなる。
紛争調停に積極的なトランプ氏
トランプ氏はかねてより自身を「平和の構築者」と称し、世界各地の紛争調停に積極的に関与してきた。その結果、紛争当事者国からノーベル平和賞に推薦される事例が相次いでいる。しかし、選考主体であるノルウェー・ノーベル委員会からの評価については自身も自覚があるようで、「どうせ私はもらえない」と自虐的な発言をすることも少なくない。
ドナルド・トランプ前米大統領が演説する様子。ノーベル平和賞推薦を巡る議論の中心にある同氏の姿。
カンボジアからの正式な謝意と推薦
ロイター通信によると、カンボジアのスン・チャントル副首相は、停戦合意後、「地域に平和をもたらした」としてトランプ氏に深い謝意を表明した。副首相は、トランプ氏の功績がノーベル平和賞に値するとの見解を示し、ロイターの追加取材に対しても2025年8月1日、改めて平和賞推薦の方針を認めたという。ノーベル平和賞の推薦権は、各国の国会議員や元首などに与えられている。
過去の推薦事例と調停の難航
トランプ氏のノーベル平和賞への推薦は今回が初めてではない。パキスタン政府は、同年6月にインドとの軍事衝突を巡る停戦の仲介役を果たしたとして、トランプ氏をノーベル平和賞に推薦することを決定している。また、同年7月にはイスラエルのネタニヤフ首相も、トランプ氏を推薦したことを明らかにしていた。
しかし、全ての調停が順調に進んでいるわけではない。インドはパキスタンとの停戦において、第三国の仲介を否定している。さらに、パレスチナ自治区ガザ地区におけるイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦協議も現在に至るまで難航しており、トランプ氏の調停努力の複雑さを浮き彫りにしている。
トランプ氏の平和賞への強い願望と葛藤
トランプ氏はノーベル平和賞の受賞を強く望んでいるとされており、彼が第1期大統領を務めていた2017年から2021年の間には、当時の安倍晋三首相に推薦を依頼したこともあったと報じられている。
しかし、今年6月、自身のソーシャルメディアへの投稿で、トランプ氏は「ロシアとウクライナ、イスラエルとイランでどのような結果がもたらされようとも、どうせ私はノーベル平和賞はもらえない。でも人々は知っている。それが私にとって一番重要だ」と発信し、平和賞への強い願望と、それが現実とならないことへの葛藤を示した。
結論
カンボジアからの推薦は、トランプ氏の国際紛争における仲介努力が一定の評価を得ていることを示すものである。しかし、ノーベル平和賞受賞への道のりは依然として複雑であり、彼のこれまでの調停実績とその国際的な評価は、今後も議論の的となるだろう。トランプ氏が平和賞に抱く願望と、現実の国際情勢とのギャップが、彼の発言からも見て取れる。
参考文献
- ロイター通信, 「カンボジア、トランプ氏をノーベル平和賞に推薦へ」, 2025年8月1日.
- 各政府発表(パキスタン、イスラエル関連報道より)
- トランプ氏ソーシャルメディア投稿, 2025年6月.