日本人の韓国正規留学が急増:若者世代が描く日韓関係の新潮流

近年、日本の高校を卒業後、直接韓国の大学に進学する日本人正規留学生の数が目覚ましく増加しており、2023年以降は語学研修生や交換留学生といった短期滞在の学生を上回る勢いを見せています。この新たな潮流は、単なる留学ブームに留まらず、若者世代が牽引する日韓関係における「地殻変動」の兆しとして注目されています。特に新型コロナウイルス感染症の流行期に、長期滞在ビザを持つ正規学生が帰国を余儀なくされることなく韓国に留まったことが、深く学びたいと願う学生たちの決意を固めるきっかけとなりました。彼らは、短期留学では得られない4年間の本格的な学びと、韓国人学生との切磋琢磨を通じた成長を求めています。

韓国正規留学博覧会で日本の学生に進学説明を行う韓国の大学関係者韓国正規留学博覧会で日本の学生に進学説明を行う韓国の大学関係者

コロナ禍を経て加速する正規留学の傾向

韓国教育省の2024年統計によると、韓国国内の4年制大学の学部に在籍する日本人学生(在日韓国人を含む)は2408人に達し、これは語学研修生(1496人)、交換留学生など(1012人)、修士・博士課程の大学院生(334人)といった他のカテゴリーを大きく上回っています。2025年の統計は未発表ですが、2500人を超える見込みです。新型コロナウイルス流行以前の2019年までの10年間は、大学院生を含めた日本人留学生全体の数は4000人前後で横ばいでした。2000年代半ばから始まった韓流ブームにより語学研修生は増加し、2011年にはピークの2500人近くに達しましたが、翌年の李明博(イミョンバク)大統領(当時)の竹島上陸を契機とした日韓関係の悪化に伴い、減少傾向に転じました。2016年には1200人台まで落ち込み、その後徐々に増加していた学部生とほぼ同数となりました。その後の新型コロナウイルス流行による出入国規制は、短期滞在の留学生が帰国を余儀なくされる一方で、長期ビザを持つ正規留学生が韓国に留まり続けることができたため、正規留学が主流となる契機となりました。

韓国の大学側の受け入れ積極化の背景

外国人学部生の増加は、韓国の大学側の積極的な受け入れ姿勢も背景にあります。韓国の留学生政策に詳しい香川大学の塚田亜弥子特命准教授によると、韓国政府は2010年から大学授業料の引き上げを規制し、2017年には入学金も廃止しました。これは各家庭の教育費負担軽減が目的でしたが、結果として多くの大学は財政難に直面しました。その中で、規制の枠外にある外国人留学生の受け入れを積極的に推進することで、財政状況の改善を図る動きが加速しました。

実際に、韓国国内の外国人留学生総数は、2000年の約6000人から2008年には5万人、2016年には10万人と着実に増加し、2024年には20万人台を達成しています。塚田氏は、「財政難に直面する韓国大学側の事情と、日本人学生の意識変化が重なり、学部生の増加につながった」と指摘しています。さらに、「中長期的な海外留学を推進する日本政府の方針にも合致しており、韓国の大学を卒業した新卒者が日本で円滑に職に就けるよう支援する必要がある」と提言しています。

日本人正規留学生に人気の大学ランキング

2024年の統計に基づく日本人正規留学生の多い大学では、旧統一教会系の鮮文(ソンムン)大学が408人で最も多くなっています。それ以外では、私立の名門である延世(ヨンセ)大学が187人で人気を集め、2位となっています。3位以降は、韓国外国語大学(146人)、崇実(スンシル)大学(132人)、慶熙(キョンヒ)大学(131人)と、いずれも私立大学が続き、これらの大学は100人の大台を超えています。

ちなみに、韓国の熾烈な受験戦争を描いた人気ドラマ「SKYキャッスル」の「SKY」は、韓国の三大名門大学であるソウル大学、高麗(コリョ)大学、延世(ヨンセ)大学の頭文字から取られており、これらは韓国人学生が目指す最難関校として知られています。ソウル大学には10人(35位)、高麗大学には78人(9位)の日本人学生が通学しています。

広がる日本人留学生のネットワークと活動

日本人留学生の重要な拠点となっている延世大学には、語学留学生と正規留学生の垣根を越えて集う「延世大学日本留学生協会(JSAY)」が存在します。今年6月には、日韓国交正常化60周年を記念した文化イベントを大学構内で開催し、活発な交流が行われました。JSAY副会長を務める南歩乃花さん(22)は、「日本人が少ない大学の留学生が孤立することのないよう、今後は十数大学をつなぐ学生交流会にも力を入れていきたい」と語っており、日本人留学生間のネットワーク拡大に意欲を見せています。

この若者世代が主導する韓国正規留学の増加は、単に学術的な交流にとどまらず、両国の文化や社会に対する理解を深め、未来の日韓関係をより強固なものにする可能性を秘めています。彼らの経験と活動は、今後の日韓関係の新たな架け橋となるでしょう。

参考文献

  • 韓国教育省 2024年統計 (引用元記事のデータに基づく)
  • 香川大学 塚田亜弥子特命准教授への取材 (引用元記事の内容に基づく)
  • 毎日新聞 2025年8月4日付記事 「日本の高校生、韓国大学に直接進学が急増…コロナ禍で長期留学希望者増」 (参照元の記事)