米国、ロシア「影の船団」への追加制裁を検討か:原油価格への影響とG7の挑戦

米国政権が、ロシア産原油の輸送を担う「影の船団」と呼ばれるタンカー群に対し、新たな追加制裁の検討を進めていることが報じられた。この動きは、ドナルド・トランプ前大統領が設定した制裁強化の猶予期限である8日までにロシアが停戦に応じない場合に発動される可能性があり、実現すれば第2次トランプ政権下で初の対ロシア制裁となる。この制裁は、ロシアの主要な収入源である原油取引に大きな打撃を与える狙いがあるとみられている。

「影の船団」の実態とその経済的役割

「影の船団」は、ロシアが国際的な制裁を回避するために利用しているとされる、老朽化したタンカーや保険に加入していない船舶などからなる大規模な輸送ネットワークです。これらのタンカーは主に中国やインドといった国々へロシア産原油を輸送しており、ロシアにとって重要な外貨獲得手段となっています。バイデン前政権下では、原油などを搭載する約200隻のタンカーがすでに制裁対象に加えられていましたが、トランプ政権ではこれまで「影の船団」への制裁を控える姿勢を見せていました。今回の追加制裁検討は、この方針転換を意味するものであり、国際社会におけるロシアの経済活動に新たな圧力をかけるものと注目されています。

米国旗が風になびく様子。アメリカ政府がロシアへの追加制裁を検討している国際情勢を象徴する画像。米国旗が風になびく様子。アメリカ政府がロシアへの追加制裁を検討している国際情勢を象徴する画像。

G7の価格上限設定とロシアの対抗策

先進7か国(G7)および欧州連合(EU)などは、2022年12月にロシア産原油に対し1バレルあたり60ドルの価格上限を設定する制裁を発動しました。これは、ロシアの戦費調達能力を制限し、ウクライナ侵攻を停止させることを目的としたものです。しかし、ロシアは「影の船団」を駆使することでこの価格上限を巧妙に回避し、市場価格に近い、あるいは上限を超える価格で原油を取引してきたとされています。このため、G7の制裁効果をさらに高めるには、「影の船団」に対する直接的な追加制裁が不可欠であるとの認識が高まっています。

追加制裁が市場に与える影響と今後の展望

「影の船団」への制裁が強化された場合、世界の原油供給網に混乱が生じ、結果として原油の供給不安から国際的な原油価格が上昇する可能性が指摘されています。ロシアからの原油供給が滞れば、特に新興国市場やエネルギー輸入依存度の高い国々において、経済的な影響が懸念されます。米国の追加制裁の行方は、ウクライナ情勢の推移だけでなく、世界のエネルギー市場やサプライチェーンにも大きな波紋を広げることになるでしょう。

参考文献