日本大学重量挙部元監督逮捕:内部告発者が明かす学費詐欺と大学の隠蔽体質

6月10日、日本大学重量挙部の難波謙二元監督(64)が、奨学生から本来免除されるべき学費を騙し取り、年間100万円以上を私的に流用した詐欺容疑で逮捕されました。この問題は、単なる金銭流用にとどまらず、大学の深部に根差した腐敗を示唆しています。問題発覚の端緒を作りながらも、告発後の陰湿な職場いじめにより今年3月に退職を余儀なくされた元日大管理マネジメント課会計係の山田俊太郎さん(仮名)が、その全貌と内実を「文藝春秋」9月号(8月8日発売)で詳細に明かしています。

日大学費詐欺問題を内部告発した元管理マネジメント課会計係の山田俊太郎氏(仮名)日大学費詐欺問題を内部告発した元管理マネジメント課会計係の山田俊太郎氏(仮名)

奨学生学費詐欺の経緯と難波元監督による隠蔽工作

昨年5月22日、山田さんは重量挙部に所属する奨学生Aさんの保護者からの電話で難波元監督による不正行為を知りました。これを受け、山田さんは独自に調査を進め、同29日には大学本部へ詳細を報告。しかし、事態を隠蔽しようと画策した難波元監督は、時を同じくして北陸地方に住むAさんの両親のもとを訪れ、「事件が明らかになればAさんの奨学生の話もナシになる可能性がある」などと脅迫していたとされています。最終的に同年7月、難波元監督は懲戒解雇処分となり、大学側はウェブサイトで調査の経過について公表しました。

問題の本質:「トカゲの尻尾切り」を超えた広範な不正

山田さんは、この問題を「トカゲの尻尾切り」で終わらせてはならないと強く訴えています。彼が指摘する問題の本質は、難波元監督の私的流用そのものに留まりません。本来学費を支払う必要のない奨学生から「授業料」などの名目で不正に金銭を騙し取っていた点にあります。これは企業会計の観点からも、教育機関としての倫理上も決して許されない、犯罪行為に他ならないと山田さんは断じています。実際に、日本大学が調査・公表した通り、重量挙部だけでなく、陸上競技部やスケート部においても同様の手口で学費が騙し取られていたことが判明しており、大学側もこれを「不法行為」と認め、関与した全員に返金措置を取っています。日本大学に事実確認を求めたところ、「本学ないし本学関係者が、山田氏の報告を受けて重量挙部の不正を隠ぺいしようとした事実も、パワーハラスメントを行った事実のいずれも全くありません」と回答しています。

この日大を巡る一連の学費詐欺問題は、単一の不正行為に留まらず、大学スポーツ組織全体に潜む構造的な闇、そして内部告発者に対する不当な対応をも浮き彫りにしています。山田さんの告発記事「日大会計係が見た運動部のドロ沼」は、「文藝春秋」9月号に掲載され、不正発覚の経緯、難波元監督らによる悪質な隠蔽工作、告発後の職場での嫌がらせの実態、そして日大からの回答など、多角的に詳細が報じられています。


参考文献

「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2025年9月号 (電子版は8月7日公開)