今年に入り5人の死亡事故が発生した韓国建設大手のポスコE&Cが、李在明(イ・ジェミョン)大統領の直接指示により、その存続の岐路に立たされています。建設現場における労働者の安全管理が厳しく問われる中、同社に対する建設免許取り消しの可能性を探る異例の動きは、韓国建設業界全体に大きな波紋を広げています。
過去の事故と処分の前例:公共入札制限と免許取り消しの違い
建設業者が事故を起こした場合、これまでのところ、公共入札の制限処分を受けるケースは少なくありません。例えば、2023年4月に発生した仁川黔丹(コムダン)マンションの地下駐車場屋根崩落事故では、GS建設が国土交通部から営業停止8カ月、韓国土地住宅公社(LH)からは公共入札1年禁止の処分を受けました。過去10年間でLHから入札制限の通知を受けた建設会社は累積で123社に上ります。これは、欠陥工事や事故に対する行政処分の一環として広く適用されてきた措置です。
しかし、労働者の死亡事故を直接の原因として建設免許が取り消された前例は、韓国においてこれまで確認されていません。1994年の聖水(ソンス)大橋崩落事故では、施工会社である東亜(トンア)建設の免許が取り消されたことがありますが、これは「手抜き工事」という明確な不正施工が理由でした。また、2022年に6人が死亡した光州花亭(クァンジュ・ファジョン)アイパーク倒壊事故の際にも、施工会社のHDC現代(ヒョンデ)産業開発に対し免許取り消しを求める声が上がりましたが、最終的には今年5月にソウル市から営業停止1年の処分に留まりました。
建設産業基本法と「公衆の危険」の解釈
現在の建設産業基本法(建産法)第83条は、建設業者の免許取り消しについて「故意または過失により建設工事を不正施工し、施設物の構造上の主要部分に重大な損壊を引き起こして公衆の危険を発生させた場合」に可能であると規定しています。建設業界関係者からは、この条項や関連施行令に、労働者の死亡事故を直接の理由として免許登録を強制的に取り消すことができる明確な規定はないとの見解が示されています。李在明大統領が「調べてみろ」「探してみろ」と指示した背景には、このような現行法の限界があるとも指摘されています。
一方で、別の関係者は、法の解釈次第では「公衆の危険」という文言が、建設現場で働く労働者の生命や身体に危険を発生させた場合も含む可能性があるとの見方を示しています。大韓建設政策研究院のイ・ウンヒョン研究委員は、今回の李大統領の強硬な発言が、過去の判例を踏襲するのか、それとも労働者安全を重視する新たな業界慣行を確立する見せしめとなるのか、今後の動向を注視する必要があると述べています。
まとめ
ポスコE&Cが直面する今回の危機は、単なる一企業の安全問題に留まらず、韓国建設業界全体の安全管理体制と、労働者の生命の尊厳を法的にどう位置づけるかという根本的な課題を提起しています。李在明大統領の指示は、これまでの判例にはない、労働者死亡事故を理由とする免許取り消しという新たな局面を切り開く可能性を秘めており、今後の法的解釈と行政処分の行方が注目されます。
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