政府のコメ増産方針転換に農家から課題の声 – 異常気象が深刻な影響

政府は5日、これまでの食料政策を大きく転換し、国内のコメ増産へと舵を切る方針を打ち出しました。これは食料安全保障の強化を目指す動きとみられますが、現場の農家からは「実現には多くの課題がある」との懸念が上がっています。特に今年の異常気象は、コメの生産に深刻な影響を与えており、政府の方針と現実の乖離が浮き彫りになっています。

政府のコメ増産方針転換と異常気象による影響に直面する日本の水田政府のコメ増産方針転換と異常気象による影響に直面する日本の水田

記録的猛暑が早場米を直撃:福井の農家の苦悩

日本列島を襲う記録的な猛暑は、各地のコメ生産に大きな打撃を与えています。福井市では、6月から2カ月連続で平均気温が統計史上最高を記録。先月の猛暑日は19回に上り、これもまた統計史上1位となるなど、かつてない高温状態が続いています。

コメ農家の白井清志さんは、この暑さ対策として例年よりも1週間早く収穫を決断しました。しかし、今年の猛暑は予想をはるかに超えるものでした。白井さんによると、「高温障害でコメが実らず、さらに水不足や干ばつで枯れてしまうため、被害を最小限に抑えるため早く刈り取った」とのこと。苦渋の決断で収穫したものの、玄米の中には未成熟の緑色のコメや、高温障害によって割れてしまったコメが大量に混じっている状態です。

白井さんは、「これほど厳しい年は農業を始めてから経験がない、初めての経験だ」と語り、水管理の難しさや高温障害の深刻さを強調しました。5日に収穫した早場米のうち、こういった被害米は平年の3倍にあたる40俵にも及び、全体の3割を占めるまでに増加。これらは加工用に回されますが、価格が大幅に下がるため、白井さん一人で約1000万円の損失が見込まれています。それでも白井さんは、秋の本格的な収穫に向けては、「見た感じでは非常に良い。これから雨が降って秋の天候になれば」と、わずかながら期待を寄せています。

宮城県南三陸町での異例の渇水対策

一方、水不足もまた深刻な問題です。宮城県南三陸町では、記録的な少雨により農家を支援するための緊急渇水対策が講じられました。先月の同町の雨量はわずか13ミリと、平年の11%にとどまる壊滅的な状況です。

通常では考えられない方法として、ミキサー車が投入され、近くの生活用水ダムから農業用水のため池へと直接水を供給するという異例の措置が取られました。南三陸町の三浦浩副町長は、「農業において非常事態だ。一番ひどいところから順に、3日間で何とか田んぼを潤したい」と、状況の深刻さを訴えました。

しかし、こうした対策が講じられても、農家の不安は尽きません。南三陸町のコメ農家は、「(生育は)いまいちだな。もう少し様子を見ないと分からないが、(収穫)量が少ないのではないか」と、今後の収穫量に対する懸念を示しています。

まとめ:政府の増産方針と現実の乖離

政府がコメ増産へと方針を転換した背景には、日本の食料自給率向上や国際的な食料危機への対応といった喫緊の課題があります。しかし、現場のコメ農家が直面しているのは、記録的な猛暑や深刻な水不足といった異常気象による生産への直接的な影響であり、政府の方針を実現するための道のりは極めて困難であると言えます。

高温障害による品質低下や収穫量の減少は、農家の経営を圧迫し、将来的な生産意欲にも影響を与えかねません。政府の増産方針が単なる目標に終わることなく、持続可能なコメ生産体制を確立するためには、気候変動への具体的な適応策や、農家への手厚い支援策が不可欠となるでしょう。


出典: https://news.yahoo.co.jp/articles/560f5749b8246e81bd3bc75eb0d1e9ef6907eb97