誰しもが人生で直面する、心の深い悩みや精神的な疲労。夜眠れないほどの不安に苛まれたり、生きづらさを感じたりする時、どうすれば良いのでしょうか。ベストセラーシリーズ『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』の著者である精神科医Tomyは、自身が最も辛かった時期に実践した「心の回復」のための具体的な方法を語っています。本記事では、Tomyが苦悩の末に辿り着いた、自己肯定感を高め、心を癒すためのシンプルな習慣と、その背後にある深い洞察に迫ります。
人生で最も辛かった時期:大切な人の喪失と「うつ病」との闘い
精神科医Tomyは、これまで経験した辛い出来事の中でも、特に身近な人の死が最も苦しい体験だったと述べています。父親の他界、そしてパートナーとの死別。この悲しみは、クリニック開業を控えた多忙な時期と重なり、Tomyは心身ともに余裕を失いました。そして、ようやく少し落ち着きを取り戻した頃、彼は「うつ病」を発症します。「仕事をしなきゃいけない」という責任感と、「気持ちは追いつかない」という現実のギャップに苦しみ、30代はまさに「ギリギリの毎日」だったと振り返っています。次々と重なる困難に、「もうダメかもしれない」とさえ思った時期もあったそうです。
心が疲れた時に一人で静かに過ごす人物。精神的な回復と自己肯定感を高める時間を象徴しています。
心が動いた瞬間:自然が教えてくれた「変わらない美しさ」
そんな極限状態の中で、Tomyが実践していたのは、驚くほどシンプルなことでした。それは「自然との触れ合い」です。天気の良い日には「気持ちがいいな」と感じながら外を散歩し、外出できない日でも窓を開けて外の様子を眺めることを習慣にしていました。
鳥のさえずり、風の音、空の青さ、雲の形、雨上がりの濡れた緑の色…。それらをただぼーっと眺めているだけで、「あぁ、世界って、やっぱり綺麗なんだな」と感じられる瞬間があったと言います。この「自然の癒し」が、彼の閉ざされかけた心を少しずつ動かすきっかけとなったのです。
困難な時期でも「変わらないもの」が与える安心感
田舎育ちであるTomyは、幼い頃から自然に親しんできました。大きな木を見上げたり、草花の香りを感じたりすることは、彼にとってごく自然な行為でした。人生が混乱し、どうしようもない状況に陥った時でも、自然は常にそこに変わらず存在しています。「昔もあった、今もある、きっとこれからもある」。そう思えることが、Tomyに「安心感」を与えたのです。
私たちが抱える苦しみや「精神的疲労」の多くは、人間社会の中で生まれた複雑な事情やしがらみから来ています。しかし、それらとは無関係に、世界は今も昔も変わらず美しく静かに存在し続けています。「この大変な時期も、いつかは終わる」「自然は変わらずそこにある」。そう感じられた時、Tomyの心はほんの少しだけ楽になったと語っています。
無理は禁物:今すぐ「すべてをなんとかしよう」としなくていい
心が辛い時、体力や気力がない中で無理して外に出る必要はありません。Tomyは、ただ窓を少し開けてみたり、空を見上げてみたり、風の音に耳を傾けてみたりするだけでも十分だと言います。自然の中には、「何も変わらないもの」が数多く存在しており、それらを見つけるだけで、心が少しずつ癒されていくはずです。
そして、もう一つ大切なのは、「今すぐ目の前のことを全部なんとかしようとしなくてもいい」という考え方です。何かを「なんとかしたい」という気持ちがあるのなら、それで大丈夫。時間は必ず流れており、焦らず、少しずつ前に進んでいけばいいのです。楽しい時期が永遠に続かないように、辛い時期も永遠には続きません。いつかまた、「この世界ってやっぱり美しいな」と心から感じられる日が必ず訪れます。それまで、どうか自分を責めず、自然の力に身を委ねてみてください。
参考文献
- 『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)