ガソリン税暫定税率廃止巡る補助金協議:財源と軽油問題の焦点

与野党間で進行中のガソリン税暫定税率廃止に向けた協議において、補助金の引き上げ案を巡る財源問題が喫緊の課題として浮上しています。特に、野党が求める「ガソリン」への補助金だけでなく、与党が「軽油」などへの対応も必要と示していることから、その範囲と費用が膨らむ可能性があり、国民生活と経済への影響が注視されています。

ガソリン税暫定税率と燃料油補助金の比較表ガソリン税暫定税率と燃料油補助金の比較表

暫定税率廃止と野党の補助金案

立憲民主、日本維新の会、国民民主など野党7党は今月1日、ガソリン価格に1リットル当たり25.1円が上乗せされている暫定税率を11月1日に廃止する法案を衆院に共同提出しました。廃止に伴う買い控えや需要の急増といった市場の混乱を避けるため、野党側は、政府が物価高対策として実施しているガソリン補助金を暫定税率分と同じ金額まで段階的に引き上げ、円滑な制度移行を図ることを提案しています。

国会でガソリン税暫定税率廃止法案を協議する与野党の議員ら国会でガソリン税暫定税率廃止法案を協議する与野党の議員ら

与党の反論と軽油の重要性

一方、自民・公明の与党は、「ガソリンの価格だけを引き下げ、軽油の価格を据え置く対応はあり得ない」と強く指摘しています。軽油にも1リットル当たり17.1円の暫定税率が上乗せされており、軽油の補助金も段階的に引き上げなければ、ガソリンに比べて割高感が生まれるとの懸念があります。軽油は大型トラックやバスといったディーゼル車の主要燃料であり、物流や旅客運送などの事業者に大きな影響を与えるため、価格の不均衡は業界からの不満を高める要因となりかねません。

補助金財源の枯渇懸念

政府は現在、ガソリンと軽油にそれぞれ1リットル当たり10円、重油と灯油に同5円、航空機燃料に同4円の補助金を支給しています。これらの補助金は「燃料油価格激変緩和基金」が財源となっており、現在の基金残高は約9000億円です。財務省の試算によると、もし5油種全ての補助金を現状の2.5倍に引き上げた場合、今年度内に基金が枯渇し、約6000億円が不足する可能性があるとされています。

この不足が生じた場合、補正予算の編成など新たな財源の確保が必要となります。ニッセイ基礎研究所の上野剛志・主席エコノミストは、「予算の無駄を削ることで財源を捻出するのは難しい」とし、「赤字国債を発行すれば、長期国債の流通利回り上昇(債券価格の下落)につながる懸念もある」と指摘しており、財源確保の困難さが浮き彫りになっています。

結論

ガソリン税暫定税率の廃止は国民の燃料費負担軽減に繋がる一方で、軽油への補助金の範囲拡大や巨額の財源確保が喫緊の課題として与野党間の協議を複雑にしています。今後の与野党協議の着地点と、それが日本の経済、特に物流・運送業界に与える影響が引き続き注視されるでしょう。

参考資料