米露首脳会談、トランプ政権が期待値抑制の背景:ウクライナ停戦の難路

米アラスカ州で15日に予定されているロシアのプーチン大統領との首脳会談を前に、ドナルド・トランプ米大統領とその周辺からは、会談の成果に対する期待値を意図的に下げる発言が相次いでいる。これは、ウクライナ紛争の打開に向けた具体的な見通しが立たない中で、停戦や和平への過度な期待が膨らむのを防ぐための予防線であるとみられている。

米露首脳会談の目的とホワイトハウスの見解

ホワイトハウスのキャロライン・レビット大統領報道官は12日の記者会見で、米露首脳会談は、トランプ氏がプーチン氏から「聞き取り作業」を行う機会であると説明した。レビット報道官は「戦争を終わらせる方法についてより深い理解を得ることが目的だ」と強調し、直ちに停戦が実現することには否定的な見方を示した。その理由として「出席するのは戦争の片方の当事者だけだ」と述べ、ウクライナ側が不在であることを挙げた。

ホワイトハウスで記者会見に臨むトランプ大統領、米露首脳会談の展望を語るホワイトハウスで記者会見に臨むトランプ大統領、米露首脳会談の展望を語る

トランプ氏の過去の発言と現状との乖離

今回の対面での米露首脳会談は、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった2022年2月以降、初めてとなる。トランプ氏は大統領復帰前から、プーチン氏と直接会談すれば「24時間以内」に戦闘を終結に導けると豪語してきただけに、今回の会談には大きな注目が集まっていた。しかし、政権発足後、既にプーチン氏と計6回の電話会談を重ねてきたが、全面的な停戦を引き出すには至っていない。

政権幹部の慎重論と背景

ルビオ米国務長官もまた12日のラジオ番組で、プーチン氏との協議は「簡単ではない」と語り、会談が不調に終わる可能性にも言及した。トランプ政権内でこのような慎重論が目立つのは、トランプ氏自身が11日に「私は『幸運を』と言い残して去るかもしれない」と述べ、結果次第では仲介役を降りる構えを見せたことが影響しているとみられる。米CNNは、トランプ氏のこうした姿勢について「(会談への)期待値を下げようとしている」と分析している。

米露首脳会談への期待値が低下する現状を示す視覚イメージ米露首脳会談への期待値が低下する現状を示す視覚イメージ

停戦への道のりと各国の主張

現在、ロシア側は停戦条件として、ウクライナ東部2州からのウクライナ軍の撤退などを求めているとされる一方、ウクライナ側は領土割譲に応じる姿勢を見せていない。このような状況下では、現時点で停戦に向けて大きな進展は望めないとトランプ政権が認識し始めた可能性がある。トランプ氏は11日、「できるだけ早く停戦が見たい」と述べつつも、最終的な決定は米国ではなくロシアとウクライナに委ねられるべきだとして、一歩引いた立場を示している。

米国とロシアの首脳会談は、ウクライナ紛争の現状を変える劇的な解決策をもたらす可能性が低いと、トランプ政権自体が示唆している。両国の立場が依然として大きく隔たっている現状では、和平への道は依然として困難を極めると予測される。

Source: Yahoo!ニュース, 読売新聞オンライン