大阪万博「オールナイト万博」の波紋:送電トラブルと吉村知事のX投稿の意図

2025年大阪・関西万博の会場となる夢洲(ゆめしま)で、ある夜に発生した大規模な交通トラブルが大きな波紋を呼んでいます。大阪メトロ中央線の送電線不具合により全線で一時運転が見合わされ、その影響で数万人の来場者が会場に足止めされる事態となりました。この予期せぬ出来事は「オールナイト万博」と称され、SNS上でも活発な議論を巻き起こしました。特に、大阪府知事であり万博理事でもある吉村洋文氏のX(旧Twitter)での情報発信、そしてある投稿のリポストが物議を醸し、その真意について様々な憶測を呼んでいます。

大阪メトロ送電トラブルと「オールナイト万博」の実態

2025年8月14日、大阪メトロの堀元治交通事業本部長は、前日に発生した中央線の送電トラブルについて謝罪会見を開きました。このトラブルは、コスモスクエア駅から大阪港駅間の送電レールで停電が発生したことによるもので、約8時間にわたる不通状態が続きました。万博協会によると、この影響で約3万人の来場者が帰宅できなくなり、多くの人々が会場やその周辺で一夜を明かすこととなりました。

この異例の事態はSNS上で「オールナイト万博」と名付けられ、各パビリオンやNTTパビリオンが臨時で休憩所として開放されるなどの対応が取られました。一部のパビリオンでは、例えばポルトガル館でスタッフがダンスを披露したり、ビールが販売されたりするなど、非常時ながらも特別な雰囲気を楽しむ来場者も見受けられました。

吉村知事のXでの情報発信とその波紋

「オールナイト万博」の最中、午前0時頃、吉村知事は自身のXアカウントで「現在、夢洲万博会場におられる皆様へ まず、このような状態になっていますことを心からお詫び申し上げます」と謝罪し、万博会場や交通機関の状況について情報発信を開始しました。さらに午前1時頃には「災害時と同様の対応をとることとし、現在、会場内におられる方に、水や食料等の物資を配布するように致します」と報告するなど、Xを繰り返し更新し、施設の開放状況やパトロール強化などの情報を発信し続けました。

大阪万博「オールナイト万博」の波紋:送電トラブルと吉村知事のX投稿の意図

吉村知事が積極的に情報共有を行う一方で、あるXユーザーの投稿をリポストしたことが物議を醸しました。その投稿は、ポルトガル館でのビール販売やドイツ館のお菓子プレゼントなど、非常時の対応に感謝を述べつつ「大変な目に遭ってる人が居る中、不謹慎だけど、超楽しい♪」と綴られていました。吉村知事によるこのリポストに対し、SNS上では「信じられない」「不謹慎だ」といった批判の声が相次ぎました。特に高齢者や子供が困難な状況にある中で、こうした投稿を公の立場にある知事が共有することへの疑問が投げかけられました。

リポストの「前段」:吉村知事の真意と情報共有の目的

前出の全国紙社会部記者は、吉村知事のリポストには「前段」があったと指摘します。「オールナイト万博」では非常事態を楽しむ人もいた一方で、熱中症などの疑いで36名が救急搬送されるなど、深刻な状況に陥った人々も少なくありませんでした。現場からは「早く帰りたい」という切実な声も上がっており、吉村知事が「楽しい」という投稿をリポストしたことが「不適切」と捉えられる背景には、このような状況があったと分析されています。

しかし、記者は、吉村知事がこのリポストを行う以前に、各国のパビリオンに対し施設開放への協力を呼びかけていた点を強調します。その後、知事は海外パビリオンの開放状況がわかる写真付きの投稿を中心にリポストしており、問題となった投稿もその中の一つに過ぎなかったと説明します。一連のリポストは、帰宅困難に陥った来場者に対し、「生」の情報を迅速に共有することが主目的であったと見られています。そのため、情報の正確性とスピードを優先し、動画が添えられ、ポルトガル館の混雑状況が一目でわかるような投稿を選んだものと考えられます。

大阪万博の送電トラブルによって引き起こされた「オールナイト万博」は、予期せぬ事態への対応の難しさと、情報共有の重要性を浮き彫りにしました。吉村知事のXでの発信は、その意図と結果の間で賛否両論を巻き起こしましたが、非常時における公人の情報発信のあり方について、貴重な示唆を与えたと言えるでしょう。


参照文献: