韓国ソウル警察庁広域捜査団は、8月14日に江南区西部を拠点とする暴力団「新南部洞派」の副組長(45歳)を含む構成員32名と周辺者2名の計34名を、暴力行為等処罰特例法(組織犯罪など)違反の容疑で摘発しました。一度は壊滅状態にあった同組織が、近年10代から30代の若年層を積極的に勧誘し、組織の再建を図っていた実態が明らかになりました。
「新南部洞派」の成り立ちと再興の試み
「新南部洞派」は、1980年代に「旧南洞派」としてソウル・永登浦一帯で強大な勢力を誇っていました。しかし、1988年には主要幹部の一斉逮捕により組織は解体されます。その後、1993年に拠点を江南西部へと移し、1999年には別組織との連合を経て現在の「新南部洞派」として再編されました。
今回摘発された副組長は、2007年に組織に加わった人物です。当初は末端組員でしたが、熱心な人材勧誘と組織運営の手腕により副組長にまで昇格し、事実上、組織のトップとして指揮を執っていたとされています。
若年層を狙った勧誘と厳格な規律
同組織は、地域の若者を中心に「喧嘩が強ければ資格あり」という基準で構成員を勧誘していました。加入後3カ月間は、組織の「行動綱領(マニュアル)」を徹底的に学ばせ、厳格な上下関係と特定の言葉遣いを義務付けていたといいます。例えば、先輩と同じ刑務所に収監された場合、「ゆっくりお休みになりましたか、兄貴」と挨拶し、手紙では「ご無事でいらっしゃいましたか」といった儀礼表現を必ず用いることが徹底されていました。また、挨拶は必ず90度の礼で行い、「兄貴」と呼ぶのが組織内の厳格なルールでした。
ソウル警察庁が提供した韓国暴力団「新南部洞派」構成員の会合の様子
組織運営と資金源:多岐にわたる犯罪行為
副組長は、毎年親睦会や運動会を開催することで組織の結束を強化する一方で、ルール違反者にはバットを用いた暴行を命じ、組織からの脱退者には報復として暴行を加えるなど、厳しい統制を行っていました。
組織の主な資金源の一つは、30代以上の構成員から徴収する月額10万〜100万ウォン(約1万〜10万円)の会費でした。これにより総額2億4000万ウォン(約2700万円)以上が集められていました。さらに、地元・江南西部で風俗紹介所を運営する業者に対し、月20万〜150万ウォンのみかじめ料(上納金)を強要。支払いを拒否する業者には10人以上の構成員を引き連れて威圧し、暴行を加えることもあったと報じられています。
これら以外にも、駐車場代行業者の営業妨害や株主総会の妨害工作など、特定の依頼を受けて実行する「依頼型の暴力行為」も請け負っていたことが判明しています。
摘発された構成員の現状と若者の後悔
今回検挙された34人のうち、20代の構成員が27人(約84%)と最も多く、その大半は無職か日雇い労働者でした。特に、16人(約50%)は過去5年間に加入した新メンバーであることが示されています。
中には10代の構成員も含まれており、彼らは検挙後に「兄貴文化や義理と美学に憧れて加入したが、2年で後悔した」と供述しているとのことです。今回の摘発は、韓国における暴力団組織の若年化と、その危険な実態を改めて浮き彫りにしました。
参照元:
KOREA WAVE/AFPBB News (2025年8月18日). 韓国暴力団「新南部洞派」摘発:若年層勧誘と組織再建の実態. Source link