参院選後の物価高対策はどこへ?混迷深まる「ポスト石破」政局の行方

酷暑が続く日本列島において、参議院選挙から早くも1カ月が経過しました。選挙戦の最大の争点であった物価高は、消費者物価指数が前年同月比で3%余り上昇する「酷高」状態が続くにもかかわらず、政治は具体的な対策を全く打ち出せていません。与党・自民党は選挙で大敗し、首相の座にあった石破茂総裁の退陣が濃厚となる中、「ポスト石破」を巡る政局の動きが活発化しており、経済対策は置き去りにされているのが現状です。

参院選から1カ月:物価高は「酷高」状態、政治は無策

物価高は国民の生活を直撃し続けていますが、参院選から1カ月が経った今も、その対策は遅々として進んでいません。自民党が掲げた「1人2万円給付(低所得者と子どもは4万円)」という公約は、選挙での大敗を受けて見直しの動きが出ており、全国民への一律給付案は宙に浮いた状態です。この状況に、石破茂首相(総裁)は選挙責任を問われ、早期の退陣を余儀なくされる可能性が極めて高まっています。

参院選後の物価高対策はどこへ?混迷深まる「ポスト石破」政局の行方

一方、過半数を獲得した野党側も、公約の柱であった消費税減税について、「食料品をゼロに」「一律5%に」「いやいや全てをゼロに」と、意見がまとまらず混迷を深めています。結果として、給付も減税も具体的な見通しが立たないまま、自民党総裁選挙の実施によって「政治的空白」が生じるリスクが高まっているのです。

識者の見解:対策なき政治と漁夫の利を得る財務省

現在の政治状況に対し、識者からは厳しい批判の声が上がっています。物価高対策が全く進まない現状に、自民党の旧安倍派の衆議院議員からは「あの選挙はいったい何だったのか」という嘆きの声も聞かれます。

経済ジャーナリストの荻原博子氏は、与党の過半数割れで給付金が見送られ、野党も消費税減税でまとまらない状況を指摘。「選挙で最大の争点だった物価高対策が、選挙後に飛んでしまった。肝心の自民党は総裁選挙モードで何の経済対策も打てていない。給付も減税もしなくて済む財務省だけが大喜びですよ。物価だけじゃなく、自動車保険とかも上がっているのに、と思うと、私だって、あの選挙は何だったの?と言いたくなりますよ」と、政治の無策を厳しく批判しています。

また、東短リサーチ社長・チーフエコノミストの加藤出氏は、物価高対策は日本銀行が主導して対処すべき問題であり、「対策に『打ち出の小槌』はなくて、低い金利を上げるしかないが、そうなるとインフレを煽ることにもなりかねない」と述べました。さらに、野党の消費税減税案についても、「欧州の付加価値税を見ると、インフレを付加価値税減税で抑えた例はない」と、その効果に疑問を呈しています。自民党が訴えてきた給付も一時しのぎに過ぎず、その自民党が総裁選挙に突入したことで、公約すら実行できない状況に陥っていると指摘しました。

物価高に苦しむ国民と「ポスト石破」の行方

参議院選挙から1カ月が経過した現在、物価高は深刻な問題として国民生活を圧迫し続けています。しかし、与党も野党も具体的な対策を打ち出せず、政治の焦点は「ポスト石破」を巡る権力闘争へと移っているのが実情です。大規模な経済対策が着手されるどころか、国民生活に直結する課題への政治的対応が停滞している状況は、多くの国民に「あの選挙はいったい何だったのか」という疑問を抱かせ続けています。今後の自民党総裁選挙の動向と、それによって形成される新たな政権が、物価高対策にどのように向き合うのか、国民の関心はそこに集まっています。


参考文献:

  • Yahoo!ニュース (2025年8月21日) 「参院選で争点となった物価高対策はどうなったのか。政治ジャーナリストの清水克彦さんは「石破首相が選挙で大敗した責任をとって早期に退陣していれば、いまごろ大規模な経済対策に着手していただろうが、いまの自民党は『ポスト石破』をめぐる争いに必死だ」という――。」