尹錫悦大統領の歴史認識発言に韓国市民団体が強く反発、「歴史的退行」と糾弾

韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が日本の読売新聞とのインタビューで、韓日間の歴史問題に関する前政権の合意維持を表明したことに対し、韓国の市民団体が「歴史的退行」と強く反発し、日本政府への毅然たる対応を求めた。21日、ソウル鍾路区の香隣教会で開かれた「韓日首脳会談に望む歴史正義平和のための市民社会時局宣言」には、韓日歴史正義平和行動を含む693の市民団体が参加。彼らは、尹大統領の「国として約束を覆すのは望ましくない」との発言を糾弾し、「日本政府に韓日間の問題解決を堂々と要求せよ」と訴えた。

尹大統領の発言、市民団体の「歴史的退行」規定

尹錫悦大統領は同日午前、日本の読売新聞とのインタビューに応じ、慰安婦合意と強制徴用賠償問題について、「韓国国民としては非常に受け入れがたい以前の政権の合意」であるとしながらも、これを維持する意向を示した。これは23日の韓日首脳会談に先立ち、日本側に送られた公式メッセージと解釈されている。背景には、朴槿恵政権が2015年に日本の安倍晋三政権と合意した慰安婦問題に関する「日韓合意」、そして尹錫悦政権が2023年に提示した、強制徴用被害の賠償請求訴訟の解決策としての「第三者弁済案」がある。この第三者弁済案は、韓国政府傘下の財団が日本の被告企業の賠償支払いを肩代わりするという内容だ。市民社会団体は、被害当事者が議論から排除されたことや、日本政府の公式謝罪が欠如していることを理由に、これらの合意や解決策に一貫して反対してきた。

韓国ソウル香隣教会での市民社会時局宣言にて、読売新聞を示す民族問題研究所キム・ヨンファン対外協力室長韓国ソウル香隣教会での市民社会時局宣言にて、読売新聞を示す民族問題研究所キム・ヨンファン対外協力室長

「被害者の側に立つべき」:各団体代表の批判

韓日の歴史問題に取り組んできた市民社会団体は、尹大統領の一連の発言を「歴史的退行」と強く規定している。正義記憶連帯のイ・ナヨン理事長は、「国民が尹大統領に望んだのは、尹錫悦政権の過ちを正し、被害者の側にしっかりと立つことだ」と述べ、「誤った合意に縛られることなく、日本政府の公式謝罪と法的賠償を引き出さなければならない」と訴えた。また、韓日歴史正義平和行動のパク・ソグン共同代表は、以前の政権による慰安婦合意などについて、「国会の批准も受けておらず、最高裁も賠償判決を下している」と指摘。「大統領は当然にも裁判所が確定した判決に従わなければならない」と強調し、大統領が司法の判断を尊重するべきであるとの立場を示した。

民族問題研究所のキム・ヨンファン対外協力室長は、尹大統領の発言が韓日間の問題解決に向けた市民活動を萎縮させる可能性に強い懸念を表明した。「今や日本では『歴史問題は終わった』と言われるだろう」と述べた上で、「大統領があのように言っているのに、市民が日本政府に歴史問題を解決せよという声をあげられるのか」と疑問を投げかけた。さらに、「(加害者に)法的責任を問い、歴史正義を具現するという問題は、絶対に譲歩してはならない」と主張し、歴史問題における原則の堅持を求めた。

尹政権の「屈辱外交」を糾弾:日本政府への具体的な要求

この日の時局宣言の参加者たちは、尹錫悦政権の対日外交を「屈辱外交」と厳しく定義した上で、尹大統領および日本政府に対し、新たな韓日関係の確立を強く求めた。彼らは時局宣言文において、「『過去の政府同士の約束を破らない』という言葉は、加害者である日本に免罪符を与えることではないということを、はっきりと知るべきだ」と明記。その上で、日本政府に対して以下の具体的な要求を突きつけた。

  • 植民地支配や慰安婦などの犯罪についての公式謝罪と法的賠償の実施
  • 在日同胞に対するヘイトクライムと朝鮮学校差別の中止
  • 福島第一原発の汚染水放出の中止
  • 関東大震災における朝鮮人虐殺と被爆被害の真相究明
  • 強制動員被害者の遺骨返還
  • 韓米日軍事協力の中止

市民団体は、尹大統領の読売新聞インタビューの内容について、大統領室に対し公式に抗議する意向も表明しており、今後の動向が注目される。

結論

尹錫悦大統領の歴史問題に関する発言は、韓国の多数の市民団体から「歴史的退行」と批判され、強い反発を招いている。市民団体は、前政権の合意や現在の解決策が被害当事者の意見を反映しておらず、日本政府の真摯な謝罪と法的賠償が不可欠であると主張。大統領に対し、被害者の側に立ち、司法の判断を尊重した上で、日本政府に具体的な歴史問題解決を求めるよう強く要求している。この問題は、今後の韓日関係、特に首脳会談の行方にも大きな影響を与えるものと見られる。

参考資料