NHK連続テレビ小説『あんぱん』が、主演の今田美桜を中心に好調な視聴率を維持しています。8月19日放送の第102話では世帯平均視聴率17.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、前週も17%台をマーク。8月20日までの平均視聴率は15.9%と、16%台を目前にしています。前作『おむすび』の13.1%と比較しても、その健闘ぶりは明らかです。しかし、この高視聴率の裏側では、物語の展開に対する疑問の声も少なくありません。
「あんぱん」視聴率堅調、前作を上回る推移
今田美桜さん演じるヒロイン・のぶの奮闘を描く連続テレビ小説『あんぱん』は、そのスタートから注目を集めてきました。最新の視聴率データを見ても、安定した高水準を保っており、多くの視聴者が日々の放送を楽しみにしていることが伺えます。特に、物語前半でのヒロインの成長や、周囲の人々との交流が丁寧に描かれたことで、視聴者の心を掴んだと言えるでしょう。この堅調な推移は、作品への期待の高さと、キャスト陣の魅力に支えられている部分が大きいと考えられます。
NHK朝ドラ「あんぱん」主演の今田美桜さんが役衣装で笑顔を見せる様子
後半で露呈した“物語の失速感”とXでの批判の声
一方で、SNSプラットフォームのX(旧Twitter)では、「なんかあんぱんわたしの中で急に失速してしまったな……なんでだろう……」「前半がピークで、後半は尻すぼみな脚本。つまらなくなってきて録画へ」といった、物語の後半における“失速感”を指摘する意見が目立ち始めています。
テレビウオッチャーは、これらの意見の背景には、主人公・のぶの存在感の希薄化があると指摘します。ドラマの前半ではヒロイン・のぶの人生がメインに描かれていたものの、後半で嵩(モデルはやなせたかし氏)と結ばれて以降、急にのぶの影が薄くなったと感じる視聴者が多いようです。「何のための前半だったのか」という疑問の声も聞かれます。
さらに、「アンパンマン」を生み出すまでの過程を描くと謳いつつ、後半は「7年飛ばし、5年飛ばし」といった性急な展開が続き、やなせ氏の創作における苦悩や葛藤が十分に伝わってこないという批判も上がっています。同様に実話を基にした夫婦の朝ドラとして高い評価を得た『ゲゲゲの女房』や『まんぷく』、『らんまん』のような深みのある展開を期待していた視聴者にとっては、物足りなさを感じさせる結果となっているかもしれません。Xでは「やっぱり、のぶを主役にするのは無理があるんだよなー嵩の人生をのぶ目線で語るストーリにすれば良かったのに 本当に勿体無い」「展開早いというかエピソードを消化してる感が強い 素直にやなせたかしを主人公にすれば良かったんでは…?のぶ主人公なおかげでその家族のエピソードも入ることになるから詰め詰め過ぎる」といった、主人公の設定自体への根本的な疑問も呈されています。
サブキャラクター「蘭子」と「八木」の存在感が増す展開
ヒロインへの失望が広がる一方で、作品に新たな魅力をもたらしているのがサブキャラクターたちの存在です。特に、のぶの妹である蘭子(河合優実)と八木(妻夫木聡)の描写には注目が集まっています。8月19日の第102話では、蘭子と八木が互いに戦争で愛する人を失った過去を明かし、二人の距離が急速に縮まる場面が描かれました。
番組開始当初から「ヒロインより存在感がある」と評されてきた蘭子には、「蘭子が主役になってもた感じある」「嵩のぶより八木蘭子シーンの方が脚本ノリノリで書いてそうなのが透けてみえる」といった声がXで多数見受けられます。メインストーリーが一部で失速気味と評される中でも、蘭子と八木のラブストーリーが視聴者の興味を引きつけ、結果的に番組全体の視聴率を支える一因となっている可能性も考えられます。
『あんぱん』は高視聴率を維持しているものの、物語の後半における主人公の存在感や、展開の速度に対して視聴者から厳しい意見が寄せられています。特に、やなせたかし氏の創作過程を深く描くという初期の期待に対し、性急なストーリー展開が物足りなさを生んでいるようです。しかし、その一方で、蘭子や八木といったサブキャラクターたちの人間ドラマが視聴者の関心を集め、作品全体の魅力を高める重要な要素となっています。メインストーリーの課題と、サブキャラクターの躍進という対照的な状況が、『あんぱん』の今後の展開にどのような影響を与えるのか、引き続き注目されます。
参考文献:
- Smart FLASH (Yahoo!ニュース掲載記事): 今田美桜主演『あんぱん』視聴率は好調も「後半がつまらなくなった」と酷評の声…「蘭子」と「八木」のラブストーリーで視聴率安泰か
(https://news.yahoo.co.jp/articles/d448103d2bd42ffbd659de32e38a0de5b45ed974)