フランスのフランソワ・バイル首相は22日、国内のすべての政治家が「私腹を肥やしている」と国民に広く見なされている現状に対し、深刻な警告を発しました。この国民の不信感を払拭するため、首相は、不当な利益を得ている議員や政府関係者を徹底的に摘発する意向を明確に表明しています。これは、巨額の財政赤字削減という喫緊の課題に直面する中で、国民の信頼を回復し、改革を推進するために不可欠な措置と位置付けられています。
国民の不信感と財政赤字削減の課題
フランス政府が2026年度予算で目標とする440億ユーロ(約7兆5800億円)の財政赤字削減に向け、国民からアイデアを募った際、圧倒的多数が政治家が「私腹を肥やしている」と考えていることが判明しました。バイル首相は、すでに二つの祝日の削減や1年間の支出凍結といった多様な歳出削減案を提示していますが、これらは大きな反対に直面しており、改革の道は平坦ではありません。こうした背景の中で、国民からの不信感は政治運営の大きな足かせとなっています。
フランスのフランソワ・バイル首相が2026年度予算の主要方針を発表する様子(2025年7月15日、パリ)
政治家の「特権」に対する国民の強い要求
歳出改革への国民の理解と支持を求めるため、バイル首相はソーシャルメディアを通じて一連の動画を公開し、22日にアイデア募集の結果を公表しました。その結果、多くの国民が「政府は政治指導者、国会議員、政府関係者の『特権』に手をつける」必要があると強く考えていることが明らかになりました。首相はこの状況を「非常に深刻に受け止めている」と述べ、「多くのフランス国民は、政治家が私腹を肥やし、公金の無駄遣いをしていると信じるようになっている」と危機感を表明しました。そして、「私たちはこのすべてを明らかにする必要がある。フランスの国会議員や政治指導者は、不当、過剰、あるいは容認できない利益を得ているのだろうか?」と、国民に向けて問いかける形で、透明性向上への決意を示しました。
過去の公金横領事件と今後の対応
フランス政界では、極右政党「国民連合」のマリーヌ・ルペン氏が欧州連合(EU)からの資金を不正に受け取ったとして公金横領罪で有罪判決を受けるなど、過去にも同様の事件が頻発しています。バイル首相は、こうした疑惑がフランス政界ではよくあることであると認めつつ、今回の「私腹肥やし」疑惑の調査を命じ、不正が見つかった場合は「撲滅する」と明言しました。この調査は、過去に歳出の無駄を暴くことで名をはせた元議員ルネ・ドシエール氏(84)が指揮を執ることになります。彼の専門的な知見と経験が、透明性の確保と不正の摘発に貢献することが期待されています。
国民からの不信を真摯に受け止め、政治の透明性を高め、説明責任を果たすことは、フランスが財政健全化と持続可能な発展を達成するために不可欠です。今回のバイル首相の宣言は、国民の信頼回復と健全な政治の実現に向けた重要な一歩となるでしょう。