ほんとそれ!「同じことばかり言ってるうちに…」コメディセンス抜群の女優のセリフが、人生の真理を突いていた〈ばけばけ第60回〉


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● 春近し、立ったまま寝るトキ

 再び、大雄寺にやって来たトキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)。

 現代っ子的な描写も多い『ばけばけ』だが「先日はヘブン先生がありがとう存じました」と丁寧に挨拶(あいさつ)するところは昔の人感がある。

 「その後どげかね」と住職(伊武雅刀)が聞くと、「はいおかげさまで、金縛りはもうすっかり。寂しがっちょるぐらいです」と返すトキだが、これって建前? せっかくお祓(はら)いしてもらったのだから、金縛りが治っていないとしても言いにくいだろう。

 それはそうと、この日、トキが寺を訪ねたのは、「『水飴を買う女』をもう一遍お聞かせいただきたく」というお願いだった。なんでまた? というところで主題歌。

 主題歌明けは花田旅館。

 トキが平太(生瀬勝久)にお弁当(?)を作ってもらっている。

 外ではツル(池谷のぶえ)とウメ(野内まる)が春の夕暮れを眺めておしゃべり。

 「しかしだいぶ日が延びてきたわね」
「本当にこの間までこの時間は真っ暗でしたけん」
「もうすぐ春だわ」

 ごくありふれた会話にツルは、「こげに同じことばっかし言っちょるうちに人は、というか、私花田ツルは死んでいくんだろうね」と自分にツッコミを入れる。

 これは意外に深いセリフである。真理を突いている。学のあるなし関係なく、むしろ、学のない人が意外と深い真理を難しくない言葉で語ることがある。これこそがとても大事なのだ。

 宿の中に入ったツルは、トキが立ったまま寝ていることにたまげる。

 「はぁ、器用だねぇ」

 第1話、幼少時のトキも立ったまま寝ていたっけ。

 ツルは、「おトキちゃんがいつ倒れてもええように」と体に触れない距離感で、手を添える。ウメには後ろを任せる。

 そこへ平太が夜食をつくり終えて持ってきた。



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