米国ミズーリ州の保健当局がこのほど、極めて稀な致死性アメーバ「ネグレリア・フォーレリ」に感染した住民が死亡したことを確認しました。この報告は、温かい淡水域での活動に伴う潜在的な健康リスクについて、改めて注意を喚起するものです。致死性の疾患である原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)を引き起こすこの微小な単細胞生物は、その危険性と感染経路、そして予防策について理解を深めることが不可欠です。
ミズーリ州で致死性アメーバ感染症例が発生
ミズーリ州の保健・高齢者サービス当局によると、この成人男性は検査の結果、ネグレリア・フォーレリへの感染が診断され、7月19日にセントルイス地域の病院で亡くなりました。患者は数週間にわたり集中治療室でPAMの治療を受けていました。米国疾病対策センター(CDC)のデータによれば、PAMに感染した場合の生存率は3%未満と極めて低く、その危険性が浮き彫りになっています。
公衆衛生当局による感染源の調査が進められていますが、暫定情報では、男性が発症数日前にオザークス湖で水上スキーをしていた可能性が示唆されています。ネグレリア・フォーレリは、湖、川、池などの温かい淡水に自然に生息しており、特に夏季の温暖な水域で活発になるとされています。しかし、PAMの症例自体は極めてまれで、1962年以降に米国で報告されたのはわずか167件にとどまっています。
ネグレリア・フォーレリの顕微鏡写真と水の安全性に関する警告
「ネグレリア・フォーレリ」とは何か? 感染経路とリスク
ネグレリア・フォーレリは、微小な単細胞の自由生活性アメーバで、「脳を食べるアメーバ」という通称で知られています。このアメーバによる感染は、ネグレリア・フォーレリを含む水が淡水から鼻を通じて体内に入ることで発生します。アメーバは鼻の奥から脳に到達し、脳組織を破壊することで原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)を引き起こします。
重要な点として、この感染症は人から人へは伝染せず、また汚染された水を飲んでも感染することはありません。リスクは、水泳や水上スキーなど、水が鼻に入る可能性のある淡水での活動に限定されます。当局は、米国各地の温かい淡水にネグレリア・フォーレリが生息している可能性を常に想定すべきだと強調しつつも、感染自体は非常にまれであることも付け加えています。
感染リスクを減らすための予防策
公衆衛生当局は、温かい淡水で活動する際にネグレリア・フォーレリによる感染リスクを低減するための具体的な推奨事項を提示しています。最も効果的な予防策は、水が鼻に入る量を制限することです。具体的には以下の行動が推奨されます。
- 水中で活動する際に鼻をつまむ。
- ノーズクリップを使用する。
- 頭を水面より上に保つようにする。
さらに、温かい淡水の浅瀬にある堆積物(泥や砂など)を掘ったり、かき混ぜたりしないことも重要です。これは、ネグレリア・フォーレリが堆積物中に潜んでいる可能性があるためです。これらの予防策を講じることで、まれなケースではありますが、致死的な感染症から身を守ることができます。
結論
ミズーリ州で確認されたネグレリア・フォーレリによる死亡事例は、温かい淡水域でのレクリエーション活動における潜在的なリスクを改めて浮き彫りにしました。この「脳を食べるアメーバ」によって引き起こされる原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)は極めて稀な疾患であるものの、その致死率の高さから深刻な注意が必要です。温かい淡水で活動する際には、鼻に水が入らないようにするなどの簡単な予防策を講じることが、自身の健康を守る上で非常に重要となります。公衆衛生当局の指導に基づき、適切な知識と対策をもって水辺の活動を安全に楽しむことが求められます。
参考資料
- 米ミズーリ州で「脳を食べるアメーバ」に感染の住民が死亡 Source link