2025年5月21日から29日までの9日間、ハーバードビジネススクール(HBS)の学生約100名が研修旅行「ジャパン・トレック」で来日しました。東京、広島、京都といった日本の主要都市を巡るこの研修旅行は、日本人学生が企画・運営の主体となり、HBS内で絶大な人気を誇っています。今回が初の来日となった参加者の一人、アレックス・リビングストン氏の滞在を通して、彼女が特に印象に残った日本の側面と、その裏側に隠された周到な準備に迫ります。
豪徳寺を訪れるハーバードビジネススクールの学生アレックス・リビングストン氏。招き猫で有名な寺院での日本文化体験の一コマ。
初めての日本訪問:サザビーズでの経験が育んだ日本文化への憧れ
アレックス・リビングストン氏にとって、2025年5月の「ジャパン・トレック」は生まれて初めての日本訪問となりました。彼女が訪日前から特に楽しみにしていたことは二つあります。一つは、日本の伝統的な建築や美術品を直接鑑賞するために、各地の神社仏閣を訪れることでした。ハーバードビジネススクール入学前にオークションハウスのサザビーズで働いていた際、数多くの素晴らしい日本の美術品を取り扱う機会に恵まれたことから、いつか日本を訪れて実際に日本文化を体験したいという強い思いを抱いていたのです。
グルテンフリーの食探求:セリアック病を乗り越える周到な準備
もう一つの大きな楽しみは、日本各地の飲食店をできるだけ多く巡り、日本でしか味わえない多様なメニューに挑戦することでした。しかし、これはアレックス氏にとって簡単な挑戦ではありませんでした。彼女はセリアック病、すなわちグルテン摂取により小腸に損傷を引き起こす遺伝性の自己免疫疾患と診断されているため、うどん、そば、パスタ、ピザ、ケーキといったグルテン含有食品を一切口にすることができません。さらには、日本食に欠かせない醤油も避ける必要があります。
この大きな制約があるにもかかわらず、日本の「食」を存分に味わい尽くしたいと願ったアレックス氏は、周到な準備を進めました。YouTubeや様々なアプリを駆使し、グルテンフリー対応の飲食店を徹底的にリサーチ。その結果、「ジャパン・トレック」で訪問する東京、京都、大阪、広島の合計約70店舗をリストアップしたオリジナルの「グルテンフリー対応の飲食店マップ」を作成し、一つ一つ制覇していく計画を立てたのです。
アレックス氏の日本への深い興味と、困難を乗り越えてでも体験を追求する姿勢は、単なる観光を超えた異文化理解への強い意欲を示しています。彼女の周到な準備と挑戦は、世界を旅する人々、特に食事制限を持つ人々にとって、大きな示唆と勇気を与えるものとなるでしょう。
[出典] Yahoo!ニュース(ダイヤモンド・オンライン)