ウクライナ人ジャーナリスト、ロシア勾留中に死亡:遺体から「拷問の痕跡」

「真実を話すことを恐れたことはありません。人々は真実を知る必要があり、罪ある者は責任を問われなければならない。私にとって、それは勇気などではなく、ジャーナリストとしての義務だ」──2022年に国際女性メディア財団が主催する「ジャーナリズム勇気賞」を受賞した際、ウクライナ人フリージャーナリストのビクトリア・ロシチナさんは、ジャーナリズムへの揺るぎない信念を語りました。彼女のこの言葉は、命を懸けて真実を追求した彼女自身の生き様を象徴しています。

ビクトリア・ロシチナさん、ロシアによる不当勾留中に死亡したウクライナ人ジャーナリストビクトリア・ロシチナさん、ロシアによる不当勾留中に死亡したウクライナ人ジャーナリスト

ロシチナさんの葬儀は、生きていれば27歳となるはずだった8月8日(現地時間)に、ウクライナの首都キーウで執り行われました。彼女の正確な死亡日時は依然として不明ですが、この勇敢なジャーナリストは、ロシアによるウクライナ侵攻の占領地での取材中にロシア連邦保安局(FSB)に拘束され、勾留中の刑務所でその生涯を終えました。今年2月にロシアからウクライナへ返還された彼女の遺体には、数多くの不審な点が見られ、国際社会に大きな衝撃を与えています。

遺体に残された惨い拷問の痕跡と不透明な死因

ロシチナさんの遺体は、「身元不明の男性」を示す「NM」の文字が記載された袋に入れられて返還されました。その遺体からは、拷問を受けたことを示す明らかな形跡が確認されています。大手紙国際部記者によると、多数のナイフによる傷跡、電気ショックによる足の裏の火傷、肋骨の骨折、腰や頭部の擦り傷など、見るに堪えないほどの損傷があったといいます。さらに、絞殺によって生じる可能性のある首の骨折も確認されており、死因を巡る疑念を深めています。

死亡時の体重は30キロを下回っていたとみられ、極度の栄養失調状態だったことがうかがえます。遺体からは脳の一部、眼球、喉頭などが摘出されていたことも判明しており、これは死因や拷問の痕跡を隠蔽しようとした可能性が高いと指摘されています。このあまりにも惨い事案は、8月26日に読売新聞が改めて報じたことで、日本でも広範な衝撃と議論を巻き起こしました。

ロシア側の不透明な対応と真相究明の困難

アメリカ合衆国議会の出資によって運営されている報道機関『ラジオ・リバティー』によれば、ウクライナ検察のユーリ・ベロウソフ氏は、「法医学を用いても原因を特定することは極めて困難な状態にある」と述べています。これは、遺体の状況から真相解明が困難であることを示唆しています。

ロシチナさんの遺体が返還されるまでには、多くの困難が伴いました。彼女が現地で行方不明になったのは2023年8月ですが、ロシア側が彼女を拘束していることを公表したのは2024年5月でした。そして、亡くなったのは同年9月19日とされており、そこからウクライナへの遺体返還までにはさらに5か月の歳月を要しました。現在に至るまで、FSBに逮捕された際の具体的な状況や、直接的な死因について、ロシア側からの公式な説明は一切ありません。ビクトリア・ロシチナさんの取材活動は常に危険と隣り合わせであり、彼女の死は、紛争地域におけるジャーナリストの生命の尊厳と報道の自由に対する深刻な侵害を浮き彫りにしています。国際社会は、この悲劇的な事件の全容解明と、責任者の追及を強く求めています。