世界ゴルフ界の二大メジャー大会であるマスターズと全英オープンは、出場資格規定を大幅に調整すると発表しました。来年からは、一部のナショナルオープン優勝者に追加の出場権が付与されることになり、日本オープンもその対象に含まれました。しかし、世界有数のゴルフ大国である韓国の代表的な大会、韓国オープンがこのリストから除外されたことは、韓国ゴルフ界に大きな波紋を広げています。
両メジャー大会を管轄するオーガスタナショナルゴルフクラブとR&Aは、この変更について「歴史あるナショナルオープンチャンピオンに資格を付与することで、世界中の選手に機会を提供し、各地域でのゴルフの普及と大会レベルの向上に繋がる」と説明しています。新たに資格が付与されるのは、スコットランドオープン、スペインオープン、日本オープン、香港オープン、オーストラリアオープン、南アフリカオープンの優勝者です。
メジャー大会出場資格の新基準と対象大会
今回の規定調整により、選ばれたナショナルオープン大会の優勝者は、ゴルフ界最高峰の舞台であるマスターズと全英オープンへの出場資格を直接獲得できるようになります。これは、これまでPGAツアーや欧州ツアーなどの主要ツアーで活躍する選手に限定されがちだったメジャー大会への門戸を、地域密着型の歴史ある大会にも広げ、グローバルなゴルフの発展を促す狙いがあるとみられます。特に日本オープンがこのリストに加わったことは、日本のゴルフ界にとって大きな朗報です。
韓国オープン除外への強い異論と根拠
今回の調整で韓国オープンが含まれなかったことに対し、韓国ゴルフ界からは強い不満の声が上がっています。韓国は世界第3位のゴルフ市場規模を誇り、数多くの世界的な選手を輩出してきた国であり、ゴルフへの熱気と消費規模は世界最高水準にあるとされています。
ゴルフメジャー大会の象徴「クラレットジャグ」全英オープンの優勝トロフィー
歴史と市場規模における比較:香港オープンとの対比
特に、香港オープンが1959年創設で韓国オープン(1958年創設)よりも歴史が浅いにもかかわらず選ばれたこと、さらには市場規模やゴルフ人口において韓国が香港の50倍以上である点を指摘し、今回の選定基準の客観性に疑問を呈しています。韓国が両メジャー大会に支払う中継権料も香港とは比較にならないと言われています。
中国市場重視の背景と「緑色阿片」論
今回の決定は、アジア市場の中でも特に日本と中国市場を重視した結果と見られていますが、ゴルフを「緑色阿片(緑のアヘン)」と呼び、かつては腐敗の象徴として扱ってきた中国市場を優先し、韓国を排除したことは、韓国側には納得しがたい側面があります。
ゴルフ人口データに基づく客観性への疑問
ゴルフ人口の面でも、スクリーンゴルフを含め約600万人を超える韓国は、日本(約550万人)を上回っています。香港(10万人)、スコットランド(40万人)、スペイン(30万人)、オーストラリア(380万人)、南アフリカ(5万人)をすべて合わせた数よりも多いというデータがあり、特に香港を含めて韓国を排除した決定は客観的な基準とは見なしがたいという指摘が出ています。
韓国ゴルフ界に突きつけられた「スポーツ外交惨事」の指摘
このような状況に対し、韓国ゴルフ協会(KGA)の「スポーツ外交惨事」ではないかとの指摘が上がっています。ゴルフ界の関係者からは、「KGAがこのような動きを知っていたのか知りたい」という声も聞かれます。
また、韓国プロゴルフ協会(KPGA)も責任を免れないとされています。今回選定された大会がアジアンツアー(香港)、日本ツアー、サンシャインツアー(南アフリカ)、オーストラリアツアー、欧州ツアーの代表的なナショナルタイトル大会であることを考慮すると、KPGAコリアンツアーは事実上、国際的に認められていないという厳しい評価が下されています。
全英オープン「予選シリーズ」方式への統合と韓国オープンの現状
今回の調整は、事実上マスターズが全英オープンの「クオリファイングシリーズ」方式を受け入れたものとみられています。昨年まで全英オープンは韓国オープンを含む世界11大会を通じて、それぞれ1~3人ずつ出場権を配分していました。しかし、韓国オープンへの出場権配分は昨年までの2枚から今年は1枚に減少しており、来年のクオリファイングシリーズ日程は9月に発表される予定です。
PGAツアー秋季シリーズ優勝者招待枠の廃止
一方で、PGAツアー大会の中でも比較的レベルが低いと評価される秋季シリーズ大会の優勝者に対するマスターズへの招待枠は廃止されることになりました。これは、メジャー大会の出場資格をより厳格化し、真に実績のある選手や歴史的価値のある大会を評価する方向への転換と解釈できます。
今回のメジャー大会出場資格規定の調整は、世界ゴルフ界の力学と各地域の市場戦略が複雑に絡み合っていることを示唆しています。日本オープンが新たな対象に追加されたことは評価される一方、韓国オープンの除外は、韓国ゴルフ界に自国の国際的プレゼンスとスポーツ外交のあり方について再考を促す大きな課題を突きつけています。今後のメジャー大会の出場資格を巡る動向、そしてアジア各国のゴルフツアーの国際的な地位の変化に注目が集まることでしょう。