あいみょん、YOASOBI報道から紐解く日本のタトゥー世論:反タトゥー感情激化の背景

最近、SNSでは著名人のタトゥーに関する話題が頻繁に注目を集めています。有名人がインスタグラムにタトゥーが見える写真を投稿すると、それがネットニュースで記事になり、コメント欄はタトゥー否定派の意見で炎上するという現象が後を絶ちません。以前に比べて、タトゥーに対する嫌悪感が強まっているように感じられるのはなぜでしょうか。本稿では、あいみょんやYOASOBIの事例を通して、現代日本におけるタトゥー世論の変化とその背景を深掘りします。

著名人のタトゥーと世論の反応:あいみょんの事例

シンガーソングライターのあいみょんが腕にタトゥーを入れていたことが発覚し、ネット上で大きな議論を巻き起こしました。この話題はタトゥーへの否定的な意見が先行する形で広がり、それに対するあいみょん擁護の声も聞かれたものの、全体的な印象としてはタトゥーに対してネガティブな反応が優勢でした。

特に「週刊女性PRIME」の記事では、「さわやかな歌声と楽曲とは裏腹に、タトゥーを入れていることが発覚」とまで報じています。これは、タトゥーがあるという事実だけでその人物の存在が根本から否定されるかのような、強い印象操作がうかがえる表現です。メディアがこれほどまでに感情的な表現を用いることは異例であり、現在の日本社会において反タトゥーの気運が非常に高まっていることを示唆しています。状況によっては「多様性の否定」や「強い先入観に基づくハラスメント」と指摘されかねないこの表現が許容されるほど、世論のタトゥーに対する厳しさが増しているのです。

タトゥー報道で注目を集めるシンガーソングライターのあいみょんタトゥー報道で注目を集めるシンガーソングライターのあいみょん

日本の刺青の歴史を振り返ると、もともと和彫りが主流であり、その多くは特定の社会層、いわゆる「カタギではない人々」が入れるものとされていました。そこに海外から洋彫りの「タトゥー」が流入し、和洋のカルチャーが混ざり合いながらも、「刺青・タトゥー=ならず者」という伝統的な概念は長く根強く残りました。ちなみに、伝統的な和彫りには普段は服で隠して見せないという美学があったとされていますが、ファッション要素の強い洋彫りと混ざり合うことで、見せるタトゥーも定着していきました。

変化する日本のタトゥー観:過去と現在の比較

タトゥーは、実際に目にすると身構えたり緊張させられたりする人も多く、強い不快感を覚えるケースも少なくありません。タトゥーと無縁の生活を送る一般人にとって、タトゥーは日常に突然現れる「不穏の象徴」と言っても過言ではないでしょう。

しかし、10〜20年ほど前の日本のタトゥー観は、むしろタトゥーを受容する方向で努力がなされていました。「タトゥー=ヤクザ」という固定観念からの脱却が図られていた時代です。当時は「海外ではタトゥーはファッションとして当たり前だから、そんなに目くじらを立てるのは野暮で狭量だ」という論調が広く受け入れられていました。確かに、そのような感性を身につけることができれば、タトゥーに対して緊張したり怯えたりする必要がなくなり、人と人との輪も広がるだろうという考え方が存在していました。

ところが、ここ数年で状況は一変します。体感としては、「海外でタトゥーは当たり前というのは嘘であり、基本的には日本と同じで、入れる人はそれなりの層。少なくともホワイトカラーは入れない」という言説がちらほらと聞かれるようになり、やがてタトゥーの話題が出るたびに必ず聞かれるほどに定着しました。そして現在、あいみょんの件で明らかになったように、世論はタトゥーに対して予想以上の厳しさを見せています。筆者の知る限り、国内の反タトゥーの気運は、この半世紀で現在が最も強いものと推測されます。

YOASOBI Ayaseと紅白出場:世論の不満噴出か

あいみょんのタトゥー報道は、彼女自身にとっても驚きだったに違いありません。世間のタトゥーに対する風当たりがこれほど厳しいとは、おそらく予想していなかったでしょう。一方で、首にまでタトゥーを入れているYOASOBIのAyase氏が多くの地上波番組に出演していたため、タトゥーは社会的に許容されたと捉えていた人々もいたかもしれません。しかし、もしかすると、その時の「我慢」が限界に達し、現在のタトゥーへの不満として一気に噴出している可能性も考えられます。

実際に、YOASOBIが2024年の紅白歌合戦に出場しなかったことについては、「Ayase氏のタトゥーがNHKに問題視されたためではないか」という憶測が特に今、盛んに囁かれています。現在の反タトゥー色が強い状況では、メディアが主観を前面に出して情報を発信することも少なくありません。そのため、偏りのない賢明な判断を下すには、今しばらく慎重に事実を見極めていく必要があります。

結論

日本社会は、著名人のタトゥーを巡る報道を通して、タトゥーに対する世論の大きな変化を経験しています。かつての「受容への努力」から一転し、現在は「反タトゥー感情」が顕著に高まっていることが、あいみょんやYOASOBIの事例から明確に見て取れます。この変化は、伝統的な価値観とグローバルな潮流、そして情報化社会における世論形成の複雑さが絡み合った結果と言えるでしょう。私たちは、この社会現象の背景にある様々な要因を客観的に分析し、今後の動向を注意深く見守る必要があります。タトゥーを巡る議論は、日本の多様性への理解と社会の寛容性が問われる重要なテーマであり続けるでしょう。

参考文献

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