石破首相の「カレー外交」:料理愛が明かす政治家の素顔と信念

厳しい政権運営の中、石破茂首相は多忙を極めていますが、実は永田町きってのカレー愛好家として広く知られています。その情熱は深く、若い頃には昼食時に自らカレーを作っていたという逸話も。そして今回、その「石破式カレー」が国際舞台でデビューを飾りました。8月23日、日韓首脳会談後の夕食会で、石破首相は自らが考案した特製カレーを韓国の李在明大統領らに振る舞い、注目を集めました。首相と親交の深いカレー専門家、一条もんこ氏に、カレーを通じて見えてくる石破首相の人物像と「石破式カレー」への評価について聞きました。

石破首相とカレー:長年の情熱

石破首相と一条もんこ氏の最初の出会いは2018年に遡ります。並々ならぬカレーへの愛情を持つ石破首相は、共通の知人を介して一条氏の存在を知り、「ぜひ会いたい」と自身の議員会館事務所に招いたといいます。一条氏は、初めて会った石破首相の印象を次のように振り返ります。「邪念のない方だなと思いました。『応援よろしくお願いします』といった政治的な話は一切なく、カレーの話だけで1時間ほど盛り上がりました(笑)」。

自民党本部で自作カレーにスパイスを加える石破茂氏(当時幹事長、2014年1月)自民党本部で自作カレーにスパイスを加える石破茂氏(当時幹事長、2014年1月)

以降、二人は一条氏お勧めのカレー店で、カレー談義に花を咲かせる仲となりました。石破首相は食に関して非常に柔軟な姿勢を見せ、本格的な南インドカレーの店では、日本ではあまり馴染みのない料理もどれも美味しそうに完食していたそうです。一条氏は「石破さんは『世界中にその国ならではのカレーがあって、どれも美味しいよね』と話していて、非常に共感しました。私の持論では、真のカレー好きは偏りなくどんなカレーも好きなんです」と語り、石破首相のカレーに対する深い理解と開かれた精神を称賛しました。

「総理大臣にはなれないだろう」――カレー店で漏らした本音

大好物を前に心が解き放たれたのでしょうか。5年前、まだ一議員だった石破首相がカレー店で漏らした“本音”を、一条氏は今でも鮮明に覚えているといいます。「石破さんは『僕は日本をより良い国にするために総理大臣になりたい。でも今の自民党で僕が選ばれることはないと思う』とおっしゃっていました」。ご自身が自民党内で「少し浮いた存在」であると自覚していたのです。一条氏は、その時の石破首相が「政治家というより素に近い顔をしていた」と感じたそうで、「日本を変えたい」という言葉が、上辺ではなく心からの願いのように響いたと明かしました。

さらに石破首相は「僕が総理大臣になれなかったら、その時は一緒にカレーで地元の町おこしをしましょう」と続けたといいます。一条氏が故郷の新潟県を“カレー県”としてPRする活動を長年続けていることを知っていた石破首相は、自身が鳥取県出身であることから、新潟と同じく日本海側に位置し、隠れた米どころである鳥取もカレーで盛り上げたいと考えていたようです。

夢の実現と揺るがぬ信念

そして2024年9月。石破茂氏は5回目の挑戦で自民党総裁選を制し、翌月の首相指名でついに“石破首相”が誕生しました。一条氏はそのニュースを見て、思わず涙が溢れたと語ります。「カレーでの町おこしは当分できなくなったし、もう一生会えないかもしれないと寂しい気持ちもありましたが、ようやく夢をかなえた姿が嬉しくて」。

現在、石破首相は「首相を辞めろ」といった批判にも晒されていますが、一条氏はこう信じています。「信念を持って国のかじ取りを続けているのではないかと思っています」。石破首相のカレーへの情熱は、単なる趣味に留まらず、彼の誠実な人物像と、困難な状況下でも揺るがない政治家としての信念を映し出していると言えるでしょう。


参考文献