米国で「新車ローン破綻」の兆候?長期化する自動車ローンが招くリスク

米国では、新車購入者の22.4%が84ヶ月以上の長期ローンを組んでいるという驚くべきデータが明らかになりました。これはかつてないほどの長期化であり、消費者が高い新車価格に直面し、月々の支払いを抑えるために長期ローンを選択せざるを得ない状況を示しています。この傾向は、将来的な負債リスクや「ローン残債」の問題を深刻化させる可能性があり、「新車ローン破綻」の兆候として警戒されています。

長期化する自動車ローンの現状と背景

近年の米国市場における新車の平均価格は約5万ドル前後で推移しており、多くの家庭にとって新車購入は大きな経済的負担となっています。月々の支払額を抑えるために、84ヶ月やそれ以上の長期ローンを選ぶ消費者が増加しており、もはや年収10万ドル(約1500万円)以上でなければ新車を購入するのは困難だとさえ言われています。

米国の自動車情報・評価サイト『エドマンズ』の報告によると、2025年第2四半期には、購入者の約5人に1人にあたる19.3%が月額1000ドル以上(約14万7千円)の支払いを契約しています。また、84ヶ月以上のローン期間も過去最高を更新し、新規融資全体の22.4%を占めるに至りました。現在、新車購入で最も一般的なのは6年ローン(36.1%)で、次いで7年ローン(21.6%)が続きます。一方、かつて標準的だった5年ローンは19%にまで減少し、8年ローン(96ヶ月)も1%未満ながら着実に増加傾向にあり、将来的な「自動車ローン問題」の懸念が高まっています。

ホンダ CR-Vの側面ホンダ CR-Vの側面

ディーラーも懸念する「ローン残債」のリスク

長期ローンは、消費者だけでなく自動車ディーラーも懸念する問題となっています。『ロサンゼルス・ギャルピン・モーターズ』のディーラー事業担当副社長マイク・シュワルツ氏は、『ブルームバーグ』に対し、ディーラーが顧客に最長期ローンを選ばないように勧めることが多いと語っています。その理由として、顧客の生活環境が変化し、下取りに出す際にローン残高が大幅に減額される「ローン残債」が発生する状況を避けたいと述べています。

『エドマンズ』の報告によれば、2025年第2四半期の新車下取り車の26.6%が負債を抱えており、平均負債額は6754ドル(約100万円)に達しています。減価償却や保証切れによる修理費用も考慮すると、負債を抱えたまま買い替えることは一層困難になるため、長期ローンは消費者にとって大きな負担となる可能性があります。

トヨタ RAV4の前面トヨタ RAV4の前面

長期ローンの隠れた高コスト:金利負担の増大

ローン期間が長くなればなるほど、車両の総費用が増加することは避けられません。『エドマンズ』のインサイト担当ディレクター、アイヴァン・ドゥルーリー氏は、84ヶ月ローンの平均利息負担が約15460ドル(約227万円)に上り、5年ローンより約4600ドル(約68万円)も高くなると指摘しています。リースも依然として有力な選択肢ではありますが、走行距離制限などの制約が多く、多くの購入者が「高額な月々の支払いを受け入れるか、車より長く続く可能性のあるローンに縛られるか」という厳しい現実に直面しています。

ホンダ CR-Vのインテリアホンダ CR-Vのインテリア

日本市場への影響と今後の展望

米国におけるこの自動車ローン長期化の傾向は、遠い国の話だけではありません。日本でもホンダ・シビックが400万円を超えるなど、新車価格の上昇が顕著であり、世界的に新車を持つことがますます困難な時代に突入していると言えるでしょう。この状況は、自動車メーカー、金融機関、そして消費者それぞれが、より持続可能な購入方法や代替手段を模索する必要があることを示唆しています。

トヨタ RAV4のサイドビュートヨタ RAV4のサイドビュー

まとめ

米国における84ヶ月以上の長期自動車ローンの増加は、新車価格の高騰が消費者の購買行動に与える影響の表れであり、将来的な「ローン残債」や高額な金利負担といった潜在的なリスクをはらんでいます。ディーラーからの警告や専門家による分析は、この傾向が経済的な不安定さにつながりかねないことを示唆しています。日本を含む世界中で新車価格が上昇する中、消費者にとっては、購入前の慎重な検討と、長期ローンがもたらす可能性のある隠れたコストへの理解がこれまで以上に重要となるでしょう。


参考文献

  • Yahoo!ニュース: 米国で新車購入者の22.4%が84か月以上のローンを組むという驚くべき事実が明らかに (元記事: Motor-Fan)
  • Edmunds.com
  • Bloomberg