歌舞伎俳優の尾上菊之助（４２）が東京・国立劇場歌舞伎公演「義経千本桜」（３月３～２６日）で、「佐藤忠信実は源九郎狐（げんくろうぎつね）」「渡海屋銀平（とかいやぎんぺい）実は新中納言知盛」、初役となる「いがみの権太（ごんた）」の“三役完演”に挑む。菊之助が公演を前に作品への思いを語った。
「千本桜の三役をやるのが夢だった。先祖が作り上げた音羽屋の型の権太をいつか演じてみたいと強く思っていた」と振り返る。しかし、二十代は女形を中心に勉強してきたという菊之助。「この三役をできるとは正直夢ではあったが、実現するかは不安だった。あきらめてはいけないと思って（夢を）見続けきた」
「父（尾上菊五郎）も権太を得意としており、“ごんたくれ”という、なにか憎めない悪党、いたずらっ子のようなところに面白さを感じている。そして一転“もどり”で自分の家族を犠牲にして述懐するところは、何度見ても感情が自分の中にあふれてくる大好きな場面」と話した。
長男で七代目尾上丑之助（６）も安徳帝役で出演する。「源平の背景とか物語全体が見えてくるとより面白いのではないかと思い、義経千本桜の絵本を読んで『今度、君がやるのはこれ。お父さんはこの３つをやる』と教えている」と笑顔を見せた。
二段目（鳥居前・渡海屋・大物浦（だいもつのうら））をＡプロ、三段目（椎の木（しいのき）・小金吾（こきんご）討死・鮓（すし）屋）をＢプロ、四段目（道行初音旅（みちゆきはつねのたび）・河連法眼館（かわつらほうげんやかた））をＣプロ－と３つのプログラムに分け上演する。（水沼啓子）
