【カイロ=佐藤貴生】中東レバノンで新型コロナウイルス対策により破綻状態の経済がさらに悪化し、民衆が抗議デモを行って治安部隊と衝突した。同様の事態はアフリカ諸国でも起きており、貧困層が多い地域で感染防止と経済活動をどう両立させるかという課題が浮き彫りになっている。
レバノン北部トリポリでは4月27日、民衆が銀行に爆発物を投げ込むなどして抗議デモを行った。デモは南部サイダなどに飛び火して3日間続き、少なくともデモ参加者1人が死亡して軍兵士40人が負傷した。
カタールの衛星テレビ局アルジャジーラは、デモ隊の男性が「このままでは飢えてしまう」などと兵士に訴える様子を放映した。
レバノンでは3月から外出制限を実施して感染を防止してきた。だが、買い物のため多くの国民が外出するラマダン(断食月)を迎え、27日に夜間の外出制限の一部緩和が表明されると、デモに火がついた。
同国では経済低迷や汚職に抗議する反政府デモが昨年10月から断続的に発生し、今年3月には政府が事実上のデフォルト(債務不履行)を宣言した。新型コロナ対策で経済はさらに逼迫(ひっぱく)し、この半年で通貨レバノン・ポンドの価値は半分以下に急落。貧困層は国民の半数に達するともいわれる。
同国のディアブ首相は4月30日、財政再建案が閣議で了承され、国際通貨基金(IMF)の支援を受ける準備ができたと述べた。ただ、経済危機の責任の所在をめぐって首相と中央銀行総裁が非難合戦を演じる一幕もあり、事態が好転するかは不透明だ。
感染防止と経済活動のジレンマは、アフリカではさらに深刻化しそうだ。アフリカ関連のニュースサイトによると、ナイジェリアの主要都市ラゴスでは4月下旬、建設作業員が現場での作業再開を求めて警官隊と衝突、約50人が逮捕された。ラゴスには各地から大量の人が流入しており、雇用拡大は喫緊の課題だ。ブルキナファソやソマリア、ニジェールでも政府の規制に民衆が反発する事例が起きているという。