【主張】中国の全人代 香港抑圧法案を撤回せよ ウイルス禍でも軍拡なのか

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 新型コロナウイルスの感染拡大により、およそ2カ月半遅れで中国の全国人民代表大会(全人代)が北京で始まった。

 極めて残念なのは、全人代が新型ウイルス対応に成功を収めたとする習近平政権の宣伝(プロパガンダ)と、軍事力の増強や香港の人々への圧力を公然と示す場になったということだ。

 李克強首相は活動報告で「感染症対策は大きな戦略的成果を収めている」と胸を張った。「国際協力を積極的に展開し、感染症情報を適時開示した」とも語った。

 ≪成長率の目標を示せず≫

 だが、事実とかけ離れている。新型ウイルスは中国・武漢から広がった。発生当初に感染情報を習政権が隠蔽(いんぺい)したため、パンデミック(世界的大流行)になったのではないかと指摘されている。全人代で自画自賛しても、むなしいばかりではないか。

 世界では感染者と死者が増え続け、パンデミック収束の見通しはついていない。中国でも吉林省などで感染の再度の広がりが報じられている。

 習政権は、初動の対応を含め全てを明らかにすると約束すべきだ。中国の影響下にある世界保健機関(WHO)を隠れみのにするのではなく、感染症に詳しい国々からの専門家を含む国際調査団を受け入れてもらいたい。

 李氏は、新型ウイルスによる感染症が中国経済に与える不確実性を訴え、今年の経済成長率目標設定を見送った。2010年に比べて中国の国内総生産(GDP)の規模を20年に2倍にし、「小康社会(ややゆとりのある社会)」を実現するという習政権の公約は実現困難になった。

 成長の頼みの綱である対外貿易は軒並み減少し、国内では失業率が大幅に増えた。景気低迷が長引けば社会不安も懸念される。

 その一方で、国防費は前年比6・6%増の約1兆2680億元(約19兆1000億円)を計上した。伸び率は昨年の7・5%を下回ったものの、増加額は約1兆1000億円にも達する。

 軍事力を使った南シナ海などへの海洋進出、台湾に対する威嚇、核戦力増強などを続ける意思を明確にしたことになる。人民の不満を海外に向けさせるのは中国共産党政権の常套(じょうとう)手段である。

 共産党機関紙・人民日報系の環球時報は、米国が中国への圧力を強めていると非難し、「対米抑止力として軍事力の増強が欠かせない」などと主張している。

 その一方、中国中央軍事委員会傘下の海警局公船は、尖閣諸島(沖縄県)近くの日本領海外側の接続水域を39日連続で徘徊(はいかい)中だ。領海に侵入したこともある。

 世界が感染症で困難を極めるこの時期に軍拡に走る中国には警戒を強めざるを得ない。

 ≪国賓来日はあり得ない≫

 李氏は活動報告で「香港での国家の安全を守る法制度を確立させる」と語り、議案が全人代に提出された。いわば香港版国家安全法である。

 香港の治安に関する法律を中国が直接制定すれば、1997年の返還から保障されてきた香港の高度な自治と「一国二制度」は崩壊の危機に直面する。中国本土と同様に共産党政権への批判的言論や抗議活動が禁じられ、香港の自由と民主は息の根を止められる。

 この法案についてトランプ米大統領は、「実現すれば極めて強力な対処を行う」と述べ、習政権を牽制(けんせい)した。全人代が香港版国家安全法を成立させれば米中関係は一層緊迫化するだろう。習政権は法案を撤回すべきである。

 習政権が一連の強権的姿勢を改めなければ、世界の自由と民主主義を重んじる国々と中国との間で、経済を含むデカップリング(切り離し)が現実味を帯びてくるのではないか。習政権は自国を国際社会から孤立させる道を歩んではならない。

 新型ウイルスの感染拡大で今年3月、習国家主席の国賓訪日が延期された。日中両政府は日程を再調整する意向を示している。

 だが、尖閣などで対日圧力を強めながら、関係が悪化の一途である米国への牽制策として国賓訪日を利用しようとする中国のしたたかな政治手法を、安倍晋三政権は見抜くべきだ。

 安倍首相は今こそ、中国が姿勢を根本的に改めない限り習氏の国賓来日を認めない方針に転じてもらいたい。

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