【主張】給付金事業の委託 政府は説明責任を果たせ


 新型コロナウイルスの影響で経営に打撃を受けた中小企業などに対して国が最大200万円を支給する持続化給付金をめぐり、事業を委託された協議会の不明朗な実態が問題となっている。

 給付金事業を受注した協議会は、ほとんどの業務を大手広告代理店の電通に再委託し、さらに電通は一部業務を外注していた。

 持続化給付金は、新型ウイルス禍で困窮する事業者を支援する制度だ。迅速な執行が欠かせない。それは当然だが、巨額の公費が計上されているだけに、国の明確な説明責任も問われる。

 769億円が投じられた持続化給付金事業は、一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」が受注し、同協議会は749億円で電通に再委託した。電通は一部の業務を大手人材派遣会社のパソナなどに外注している。

 野党は「経済産業省が禁じる全部再委託にあたるのではないか」と政府を追及している。政府はこれを否定し、協議会が得た収入の多くは振り込み手数料に充てたとしている。それなら収支の明細などを公表すべきである。

 国の事業では民間企業への委託は一般的に行われている。ただ、事業を再委託された電通が協議会の設立に関与し、職員にも電通やパソナなどからの出向者がいる。実体が不透明な団体が公的事業の受け皿となれば、国の監督が行き届かない恐れもある。

 持続化給付金は、コロナ禍で売上高が減少した中小企業や個人事業主にとって貴重な資金だ。その実施母体が疑念を招くようでは、事業そのものに対する国民の信頼が揺らぎかねない。

 問題は、野党が追及するまで政府が明確な説明をしてこなかった点だ。準備を急ぐ事業だったのは理解できるが、公費を投入する以上、透明性を確保した執行体制が求められる。

 政府は旅行や外食などの消費喚起のキャンペーン事業でも、総事業費の約2割にあたる3千億円を事務委託費とする入札公募を始めていた。しかし、事務経費としては巨額であるとの批判を受けて、公募を一時中止した。

 効率的な運営で経費をなるべく削減し、その分を本体の事業費に充てるのは当然だ。機動的に対策を実行するためにも丁寧な説明を通じ、国民の理解を得る努力を尽くさねばならない。



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