露極東で大規模デモ 知事逮捕に住民反発 中央集権のほころび露呈





11日、ハバロフスクの中心部で、フルガル知事拘束に抗議し行進する市民ら(タス=共同)

 【モスクワ=小野田雄一】ロシア極東ハバロフスク地方で今月中旬以降、反プーチン政権デモが続いている。殺人容疑で現職知事が逮捕されたことをきっかけに、中央による地方軽視への不満が噴出した。近年のロシアでは別の地域でも同様のデモが発生。プーチン政権下で構築された強固な中央集権システムの“ほころび”が表面化しつつあるとの見方も出ている。

 逮捕されたのはハバロフスクのフルガル知事。2004~05年に極東地方で起きた複数の殺害事件などに関与した疑いで、9日に露治安当局に身柄を拘束された。フルガル氏は容疑を否認。プーチン大統領はフルガル氏を解任した。

 地元実業家出身のフルガル氏は18年の知事選でプーチン政権の与党「統一ロシア」候補に圧勝し、知事に就任した。自ら報酬を削減するなど市民に近い姿勢で地元では人気が高く、プーチン政権とは一線を画して独自の政治基盤を構築してきた。

 そのため地元では逮捕が「地方自治への圧力」と受け止められ、フルガル氏が所属する自由民主党のジリノフスキー党首は「政治事件だ」と反発。ハバロフスク市では11日、逮捕への抗議デモが発生し、その後も拡大。露経済紙ベドモスチによると、18日には同市の人口の約10%に相当する5万人以上が参加した。

 デモではフルガル氏釈放の要求とともに、「モスクワは私たちを放っておけ!」などと、中央政府への批判もスローガンに掲げられた。同紙は「デモの主な動機は知事の逮捕以上に、地方の運命がモスクワで決定されていることへのいらだちだ」と指摘した。

 実際、石油価格下落などで財政難が続くプーチン政権は近年、限られた資本をモスクワなど大都市に集中的に投資。政権が掲げる極東などの大規模開発計画は予算不足でかけ声だけで終わっている。露専門家の間では、デモ以前から「地方では『中央に搾取されている』との不満が強まり、自治意識が高まっている」と分析されていた。

 “反中央”とも呼べるデモは近年、別の地方でも起きている。露北西部アルハンゲリスク州では18年、プーチン政権派の知事が住民への説明もなくモスクワのごみの受け入れを決め、大規模な抗議デモが発生。知事は解任されたが、抗議活動は現在も続いている。

 プーチン氏は20日、ハバロフスクの知事代行に自民党のデクチャリョフ下院議員を任命。同党から知事を選ぶことで沈静化を図ったとみられるが、同氏は地元とのつながりを持たず、反発が収まるかは不透明。ベドモスチは「今の粗雑なモスクワの中央集権主義では国家の一体性が揺らぐ可能性がある」と指摘した。



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