シャープペンシルを素早く操り、ノートに数字を書き込む。紙からペン先を離している間も小刻みに動いたまま。まるで、宙に字を書いているようでもある。
【画像】宿題は何のため?教員と保護者、意義に「ずれ」
福岡県内の公立小6年、シュンさん(12)=仮名=は今、勉強をするのが面白くてたまらない。
子どもは大人に比べて新型コロナウイルスの感染者数が少ないことから、対面授業を再開した塾に週4回通う。周囲も自分もマスク姿であること以外は、コロナ前と変わらない。
「やったらやるだけ成績が上がるので」。理由は極めてシンプル。午後10時には寝たいと考えているが、「あと1問」に集中するあまり、いつの間にか時間が過ぎる。塾と自宅で平日は5時間、土日祝は8時間は机に向かう。
低学年の頃は将棋に熱中していた。父の影響で始め、九州各地から子どもが集まる大会に出場。負けた悔しさで火が付いた。プロ棋士を輩出している将棋教室に通い始め、段位の認定を受けた。
地域の小学生が参加する大会で優勝もしたが、ほどなく思い知る。「自分より年下で、もっとすごい人がいる」。プロ棋士は狭き門。父からも「勉強して難関大に受かる方が門戸が広い」と諭され、何だか冷めてしまった。
塾にも通い始めており、高学年の頃には「頭の中」が勉強に切り替わった。テスト結果を見るたびに「負けたくない」という気持ちが湧いてきた。算数をはじめ、社会や理科の成績は順調に伸びた。
コロナの影響による春の長期休校中も勉強に没頭した。休み前に学校から配られた10枚ほどのプリントは約2時間で解き終えた。その後は塾の課題に取りかかった。休校中も塾からは週2回、新たな課題が出され、その内容に関する短時間の説明があった。
国語、算数、理科、社会。4教科の学習計画を立てると、設問を解いて自分で答え合わせをした。理解できない問題は、自宅でリモートワークする会社員の父(50代)にその都度尋ねた。それでも分からなければ、塾の先生に質問した。