韓国が日本企業の在韓資産を現金化した場合、日本の対応は如何なるのか?
「文化財及び文化協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」の無効化・空洞化が招く日本の対抗措置を予測してみたい。
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旧朝鮮半島出身者らへの慰謝料・賠償金の為に韓国が日本企業の在韓資産を現金化する準備をしている。日本はこれが1965年の「日韓請求権並びに経済協力協定」違反行為としている。
「日韓基本条約」本文及びその付属協定・交換公文と言う条約パッケージの一体性を維持する為、日本はそのパッケージに制約されず、対抗措置・制裁が取り得る事となる。
それでは「文化財及び文化協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」に日本が拘束されず、対韓対抗措置・制裁を取る場合についても考えてみよう。
まずは韓国と日本で博物館間の文化財の貸出等の文化交流を停止し、相手国への搬出は認められなくなる。
「日韓請求権並びに経済協力協定」に日本が拘束されずに対韓対抗措置・制裁を取る場合でも、全額回収の実現性は低い。政治的負担が大き過ぎる為に、あくまで外交のカード、政治的圧力の手段になると予想される。
文化財の場合も、敗戦時の在韓日本資産や1965年以降の経済協力等によって日本が提供した資金の返還を求める事と同様の対応が予測される。つまり、この協定の後、日本の好意的対応と言う事で朝鮮半島由来の文化財約二百数十点韓国に提供された。
その後も様々な名目で日本が韓国に提供した文化財が返還要求の対象になるはずだ。しかし、その文化財の特徴が“半島由来”である事を考えると、韓国の拒絶に当然直面するはずで、現実性・実効性に乏しい。
韓国と日本の協定は、「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」(1954年/ハーグ条約)、および「文化財の不法な輸入、輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約」(1970年/ユネスコ条約)と並んで、締結時点以前への遡及適用を認めていない点において日本あるいは「帝国の経験」の有る諸国に有利なものだったと言われている。
韓国の大法院も憲法裁判所も共に、日本の朝鮮統治は不法かつ非人道的な軍事的な暴力による占領支配と解釈しているので、それを前提としない(その被害の回復を前提としない)法律も、判決も、国際法・条約等も認められないと言うのが大前提となっている。
従ってこの「文化財及び文化協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」や文化財に関する国際法があったとしても、日本統治下において(場合によっては前近代においても)日本に“流出”した文化財は、いかなる手段を用いたとしても、回収し得ると言う可能性・解釈の余地を生み出した判例だったのだ。
故に2012年の対馬の仏像盗難事件においても、被害者の側に正当な入手経緯の立証を求める判決を下しただけでなく、元々の所有者と主張する寺への返還を認めたのだ。
結論としては、この協定の拘束如何を問わず、日本が取り得る対韓対抗措置・制裁はあまり無い。つまり、
1、合法・不法に韓国に渡ったり、提供したりした文化財の返還を求める事、
2、文化財盗難事件に対する韓国の対応を条約・国際法として国際社会・国際機関において批判し続ける事、
3、日本国内の文化財の防犯を強化しつつ、外国への搬出も含めて文化財盗難への刑罰を重罰化する事、
くらいしか無さそうだ。