
順天堂大静岡病院(静岡県伊豆の国市)で発生した新型コロナウイルスのクラスター(感染集団)を巡り、県は6日、病院に経緯などを確認するための聞き取り調査に入った。病院では発症後や検査後に感染者が勤務を続けたことが明らかになっており、県はこれを問題視して、調査を決めた。一方、病院側はこれまで、記者会見などで具体的な説明をしておらず、不安を募らせる患者らも多い。
【デジタルストーリー】2020年 秋の景色
この日は、午後から東部保健所や県の職員が病院を訪れ、感染対策部門の担当者から感染した職員の勤務状況や、発症後に勤務した経緯などを聞き取った。そのうえで、今回の不適切な対応を改善するように求めたという。
病院は、10月29日に医師ら6人の感染が判明したとホームページ(HP)で公表した。その後、31日、11月1日、2日と相次いで他の職員らの感染が分かった。これまでに判明しているのは医師と研修医9人、看護師8人、事務員1人、患者1人の計19人に上る。県はこのクラスター関連で、ほかにも2人を発表している。
県によると、症状が出た後やPCR検査を受けた後も出勤した人が複数いたほか、発症後に同僚らと会食をしたケースがあったという。病院のHPでは、これらの行動が病院の新型コロナウイルス対応の規則に沿っているかの説明がなく、県は聞き取りで状況を確認したとみられる。
病院は1967年に開設した577病床を有する県東部の基幹となる医療機関。昨年度の利用者は1日あたりの外来患者が約1700人、入院患者が約570人に上る。
病院がこれまでHPで記載したのは感染者の人数、職種、診療を制限している科のみで、感染拡大の経緯や感染した医師らの行動歴といった説明は一切していない。県の発表で大まかな行動歴など必要最低限の情報が示されたものの、担当科は明らかにされていない。
感染者が判明して以降、病院には報道機関や患者らからの問い合わせが相次いでいる。県も記者会見を開くなどして説明するよう複数回求めた。しかし、病院側は「これまで通りHPで情報更新する」「会見をする必要はない」と回答している。
こうした中、6日に病院を訪れた伊豆の国市の50歳代男性は、院内にほとんど人影のないフロアがあったことを指摘し、「発生元の診療科のように感じたが、それすら教えてくれなかった」と話した。
定期的に通院しているという市内の別の50歳代男性は、「病院に行っても大丈夫なのか確認の電話をしたが、ずっとつながらない。せめて質問を受け付ける窓口を作ってほしい」と不安を口にした。