インターネット証券「SBI証券」の顧客6人の6口座から計9864万円が流出した事件を巡り、不正に開設された銀行口座から現金を引き出したとして、埼玉県警は10日、いずれも同県川口市に住む中国籍の少年(19)と少女(19)を窃盗容疑で逮捕した。2人は容疑を認め、少年は「ネット上で知り合った中国人から指示を受けた」と説明しているといい、県警は組織的な犯行とみて調べる。
【SBI証券不正出金の構図】
逮捕容疑は8月、川口市内のコンビニエンスストアの現金自動受払機(ATM)で、SBI証券の顧客だった埼玉県内の40代男性名義で開設されたゆうちょ銀行の口座から、現金計52万円を引き出したなどとしている。男性の証券口座からは約3370万円の出金が確認されており、不審に思った男性が9月に県警に相談していた。
同証券の発表によると、不正出金に関わったグループは何らかの方法で顧客のパスワードなどを入手し、証券口座に不正にアクセス。金融商品を勝手に売却し、同じ顧客の名義で不正に開設した銀行口座に現金を送金していた。一方で、同社から情報が流出した形跡はなく、顧客が利用する他のサイトから流出したIDやパスワードが悪用された可能性がある。
専門家はパスワードを使い回す危険性を指摘する。ネットセキュリティー大手「トレンドマイクロ」のセキュリティー専門家、岡本勝之さんは「盗まれたアカウント情報は闇サイトのマーケットで売買されたり、ウェブ上に公開されたりすることもある」と指摘。サービスごとに異なる複雑で長いパスワードを設定することを勧めている。パスワードを自動作成・管理するソフトを活用することや、パスワードを紙にメモした上で、どのサービスに使っているかは自分だけが分かるような暗号や符丁にしておくことも対策になるという。【成澤隼人、中川友希】