アストラゼネカ、新たなコロナワクチン治験か データに疑問の声


アストラゼネカ、新たなコロナワクチン治験か データに疑問の声

アストラゼネカが23日に発表した新型コロナワクチンの臨床試験(治験)の中間結果によると、まず半分の量を投与し、少なくとも1カ月の間隔を置いて全量投与した場合の有効率が90%と、計画通り全量を2回投与した場合の有効率62%を上回った。ワクチン開発関係者によると、1回目に半分の量を投与したのは「セレンディピティー(偶然の幸運)」だったという。

これに対し、一部の科学者からは治験結果の信頼性を疑問視する声が上がっていた。

報道によると、ソリオCEOは半分の量を投与した場合の有効性をさらに評価するために新たな治験を実施すると表明。「より有効性が高い可能性のあるケースが見つかったために検証しなければならず、追加試験が必要だ」とし、おそらく「国際的な試験になるが、有効性が高いことは分かっているので、今回の試験は少ない参加者で迅速に実施できる」と語った。

また、今回の追加試験で英国と欧州の規制当局による承認が遅れるとは想定していない一方、米食品医薬品局(FDA)は米国外で実施された治験結果に基づきワクチンを承認する可能性が低いため、米国での承認には時間がかかるかもしれないと指摘。一部の国では年内の認可が予想されるとした。

インペリアル・カレッジ・ロンドンの実験医学教授、ピーター・オープンショー氏は「限られたデータ発表しかない」とし、完全なデータと規制当局の見解を待つ必要があると指摘。米国と欧州の規制当局では「異なる見解を取る可能性がある」と述べた。

専門家が懸念するのは、治験で最も有望な90%の有効性を示したのがサブグループ(特定の層)解析だった点。英イースト・アングリア大学のポール・ハンター医学教授は「無作為化比較試験におけるサブグループ解析は常に困難を伴う」と述べた。

また、アストラゼネカがこれまで公開したデータについて重大な空白を指摘する声もある。インペリアル・カレッジ・ロンドンのダニー・アルトマン免疫学教授は「われわれはわずかなプレスリリースに基づき、非常に複雑な治験デザインを評価しようとしている」と懸念する。

アストラゼネカが発表したデータは、目玉となる有効率以外に科学者たちが評価できる部分はほとんどなく、例えばサブグループで何人の感染が発生したのか、2回の全量投与群やプラセボ(偽薬)群で何人の感染があったかという点は明らかにされていない。

フランス国立科学研究センターのモルガンヌ・ボンセル氏は「アストラゼネカがデータを選んでいる印象を受ける」と語った。

一方、アストラゼネカは、半量投与については効果安全性評価委員会(独立データモニタリング委員会)と英規制当局によって審査され、承認されたとし、規制当局が公に「懸念はない」と確認したと説明した。

また同社広報は、報道についての質問に「データを評価中で、さらなる評価のための最善のアプローチを規制当局と検討していく」とした上で、追加のデータは「当局への提出に向け準備している既存の治験データに加えられることになる」と述べた。

オックスフォード大からコメントは得られていない。

米FDAは、アストラゼネカのワクチン治験についてコメントしていない。欧州医薬品庁(EMA)は26日、「ワクチンの有効性と安全性に関するデータが同社から届けば、数週間以内に評価する」と表明した。

<楽観的な見方も>

新たな治験で得られるデータの査読(ピアレビュー)付き分析結果は今後数週間にジャーナルに掲載される見通し。

アストラゼネカはワクチンの供給で、日本やオーストラリアなど複数の国と合意している。

オーストラリアのモリソン首相は27日、メディアに対し、同社のワクチンへの信頼を表明した。アストラゼネカのワクチンは豪国内では製薬会社CSLが生産を手掛ける。

また、豪国内で同ワクチンの治験を行っているインド血清研究所は発表文書で「有効性は最低でも60─70%だ。これは有望なワクチンといえる」とした。

*内容を追加しました。



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