韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相の去就を、同国メディアが注目している。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の妹、金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長から名指しで批判されたためだ。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は「従北」姿勢が強く、これまでも北朝鮮の意向に沿うような人事が繰り返されてきた。文大統領は「主権」を守り切れるのか。
「金与正氏に名指しされた康京和外相も近く更迭か」
朝鮮日報(日本語版)は8日、こうした見出しの社説を掲載した。背景には、南北間のトラブルがある。
康氏は5日、バーレーンで開催された国際会議で、新型コロナウイルスについて「感染者ゼロ」と主張する北朝鮮を「信じがたい」といい、「新型コロナが北朝鮮をより北朝鮮らしくさせた」などと批判した。
これに対し、与正氏は8日の談話で、「(康氏は)われわれの非常防疫措置を差し出がましく批評した」と前置きして、「私たちはいつまでも正確に記憶する」「康氏は妄言で、凍りついた南北関係にさらに冷気を吹き付けようとしている」と猛烈に非難したのだ。
朝鮮日報が社説を、「これに文大統領がどのような反応を示すかに注目が集まっている」と締めくくったのには理由がある。文氏は、北朝鮮に配慮するような人事を連発しているのだ。
北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長は6月、軍事行動の完全撤回を求めた韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相を批判し、南北関係は韓国側の「態度次第だ」とクギを刺した。2カ月後、文氏は国防相を交代させた。
文氏は7月、情報機関「国家情報院」のトップに、金大中(キム・デジュン)大統領時代に秘書室長を務めた朴智元(パク・チウォン)氏を起用した。朴氏は「従北派」の代表で、北朝鮮への違法送金で有罪判決を受けた人物だった。
権力者にとって、人事権は最大の武器である。それを他国に左右されるとすれば、主権を譲り渡したようなものだ。
韓国情勢に詳しいジャーナリストの室谷克実氏は「文政権では、人事だけでなく、立法にも北朝鮮の影響が及んでいる。康氏は、青瓦台(大統領府)の評判がイマイチで、更迭される可能性はある。ただ、更迭すれば『文政権はやはり北朝鮮の操り人形だ』という見方が強まる」と語った。