トランプ氏とCPACの聴衆が共和党を敗北に導く



大統領退任以来初めて公の舞台で演説を行ったドナルド・トランプ氏/Joe Raedle/Getty Images

大統領退任以来初めて公の舞台で演説を行ったドナルド・トランプ氏/Joe Raedle/Getty Images

(CNN) ドナルド・トランプ氏が全国的な舞台への復帰を果たした保守派の大規模イベント「保守政治活動会議(CPAC)」は、事前に予想した通りの内容だった。二面性を帯びた演説の中で、トランプ氏はときおり用意された原稿の電光表示に退屈した表情を浮かべたかと思えば、自らのアドリブを面白がる姿も見せた。3度目の大統領選出馬をほのめかし、得意のテーマである移民の話題で訴えかけ(再選を目指した昨年の大統領選ではどういうわけかこの問題に触れなかった)、相変わらず昨年11月の大統領選で勝利したのは自分だとの茶番に言及した。挙句の果てには複数の共和党議員の「首切りリスト」を読み上げ、党からの追放を呼び掛けた。

スコット・ジェニングス氏/Courtesy of Scott Jennings
スコット・ジェニングス氏/Courtesy of Scott Jennings

注目すべきは第3の党を立ち上げる考えを否定したことで、これは実際のところ好影響をもたらす。共和党は分裂したり小さくなったりすれば選挙で勝てない。共和党議員の中に党の規模縮小を目指す動きがあるのは理解に苦しむ。共和党は先の大統領選で700万票近い差で敗れた。1984年以降、大統領選の一般投票の結果で勝利したのはブッシュ親子のみ。共和党はホワイトハウスを失い、連邦議会上下両院の支配権も手放した。議会内の均衡が比較的保たれているにもかかわらず。

こうした状況にありながら、テッド・クルーズ上院議員はCPACでトランプ氏より数日先にスピーチを行い、一部共和党議員らの除名を呼び掛けた。同氏が「カントリークラブの共和党議員」と嘲笑するこれらの議員は、どうやらゴルフ三昧(ざんまい)の上に貸し切りスペースでの食事に目がないことから不興を買っているようだ。クルーズ氏は、トランプ氏が現在カントリークラブに居住し、そうした施設を数多く所有しているのを知らないのだろうか?

クルーズ氏のスピーチは、ジム・ジョーダン下院議員のコメントをまねたものだ。ジョーダン氏が先ごろ宣言したところによれば、共和党はもはやワインを飲み、チーズを食べる人間を認めない。ブルージーンズをはき、ビールを飲む人間だけを受け入れるのだという。いったいどれだけのワインとチーズが、トランプ氏の別荘「マール・ア・ラーゴ」で毎日消費されていると思っているのだろうか?

本当に問うべきは次の点だ。なぜ共和党は全員でまとまることができないのか? 2大政党のより小さい方が自ら規模を一段と縮小させてどうなるというのか? だいたいクルーズ氏が、リッツ・カールトンの常連客を受け入れるか、排除するかを判断できる立場だろうか? ほんの数日前、自分もメキシコにある同ホテルに宿泊してきたばかりではないか。

実際問題、共和党は現在のところ2022年の中間選挙で議会の過半数を獲得できる状況にある。地理学上並びに管轄区域上の利点に加え、選挙区の改正も有利に働くためだ。このほか、かなりの可能性でバイデン大統領が今後、伝えられるよりもはるかにリベラル色を強めていくだろうという要因もある。

しかし、共和党が24年の大統領選に勝利できる根拠はない。党としてより柔軟なブランドイメージを打ち出さない限りそれは不可能で、カントリークラブ好きからホワイトカラー及びブルーカラーの労働者、若者から年配者、白人、非白人に至る層をしっかりと取り込まなくてはならない。保険代理人も、配管工も必要だ。退職したロータリークラブの会員も、若い溶接工も。大統領選への投票が12回目となるおばあちゃんも、今回初めて投票するその孫娘も。

そうした人々が皆必要なのだ。

とはいえ一体だれが、共和党をこれほど広範な連合体へと導いて行けるのだろうか? 直接の経験的証拠から言って、トランプ氏を党の中心に据えて24年に臨めば、おそらく負け戦になる。同氏が出馬した2度の大統領選での得票率はどちらも12年大統領選の共和党候補となったミット・ロムニー氏に及ばない。しかも20年の大統領選の後には、失敗に終わったものの選挙結果を覆そうとする暴動も発生した。あの場面でトランプ氏は、大統領就任時の宣誓に反し、合衆国憲法を守る行動をとらなかった。

一部の共和党議員(とりわけトランプ氏への忠誠心が最も強い議員ら)は誤りを犯し、政治を引き算で戦うものと考えているが、実際は足し算の勝負なのである。道理をわきまえた中道右派の政治組織を作り上げるのは全く可能であり、それがひきつける幅広い連合体にはトランプ氏の支持者たちも含まれる。バイデン氏の率いる民主党は、すでに共和党にとって有利な状況を生み出している。自分たちが極左的とみなす政策に対抗することで、共和党は党として容易に団結できるからだ。この先の課題は競争力を有する政権オプションを提示することだが、それは不平不満と陰謀論以外を基礎とするものでなくてはならない。

トランプ氏が16年の大統領選で掲げた政策綱領は移民、貿易、政界の腐敗の一掃だった。20年には事実上そうした綱領がなかったため、共和党は党としてのアイデンティティーを探る必要に迫られたが、今なお同氏への盲目の忠誠を上回るものは見つけられていないのが実情だ。我々はここからどこへ行くのか? 問題の解決には時間がかかるだろうが、今後も「一段のトランプ化」にひた走り、党を縮小して同氏所有のクラブの1つに加わるような過ちを犯すなら、共和党の大統領がホワイトハウスに舞い戻る公算は小さいと言わざるを得ない。

スコット・ジェニングス氏はCNNへの寄稿者で、共和党の選挙対策のアドバイザーを務める。過去にはジョージ・W・ブッシュ元大統領の特別補佐官やミッチ・マコネル上院議員の選対アドバイザーを歴任。ケンタッキー州ルイビルにあるランスイッチ・パブリック・リレーションズのパートナーでもある。記事の内容はジェニングス氏個人の見解です。



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