(CNN) 米食品医薬品局(FDA)は12日、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチン部門ヤンセンが開発した新型コロナウイルスワクチンに関する製品情報を改訂し、接種後に「ギラン・バレー症候群」と呼ばれる神経疾患のリスクが高まる可能性があると警告した。
FDAは、J&Jのワクチン接種とギラン・バレー症候群発症との因果関係は確立されていないとしながらも、まひを伴うこともある本症状の報告が増えていると指摘。CNNに寄せた声明の中で、「接種後に観察されたギラン・バレー症候群のリスク上昇に関する情報を、J&Jの新型コロナウイルスワクチン用ファクトシートに含めることにした」と説明した。
改訂版の製品情報には、「緊急使用許可に基づくヤンセン新型コロナウイルスワクチン使用後の有害事象の報告は、接種から42日の間にギランバレー症候群のリスクが増大することを示唆している」と記載されている。
さらに「ヤンセンのワクチンとギラン・バレー症候群のリスク増大との関連性を示唆する証拠はあるものの、因果関係を確立するには十分ではない。モデルナやファイザー・ビオンテックの新型コロナウイルスワクチンには、同様の兆候は確認されていない」とした。
FDAによると、ヤンセンのワクチンを接種した1280万人のうち、ギラン・バレー症候群に関する100例の初期報告が米政府のワクチン有害事象報告システムに寄せられているという。
ギラン・バレー症候群は、体の免疫が神経細胞を傷つけて筋力低下やまひなどの症状を引き起こす神経疾患。「ほとんどの場合、ヤンセンのワクチンを接種してから42日以内に症状が始まった。発症する確率は非常に低い」とFDAは付け加えている。
四肢の脱力やひりひりするような痛みのほか、歩行や発話、物をかんだりのみ込んだりすることが困難になるといった症状、物が二重に見える複視、腸や膀胱(ぼうこう)のコントロール障害といった症状が出ることもある。
ギラン・バレー症候群が報告された100人のうち95人は入院を必要とし、1人は死亡した。
米国でギラン・バレー症候群を発症する患者は年間の推定で3000~6000人で、大半は完全回復しているとFDAは説明。一部のインフルエンザワクチンや帯状疱疹(ほうしん)予防ワクチンに関連したギラン・バレー症候群の発症率増加も報告されているという。
J&Jは、この問題について米疾病対策センター(CDC)やFDAと協議していることを確認した。「これが起きる確率は非常に低い。報告された症例の割合は、背景率をわずかに上回る」としている。
CDCは、たとえ同ワクチンによってギラン・バレー症候群のリスクが高まるとしても、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた方がいいことに変わりはないと強調している。
CDC広報は、この問題についてはCDCの諮問委員会会合で協議する予定だと説明した。