バスやタクシーなど公共交通機関の空白地域で、高齢者らの外出を手助けするため、住民たちがマイカーなどで送迎する取り組みが広がっている。高齢化が進む地域では、運転免許証を自主返納する人も多い。将来を見すえて、「自動運転」のサービスに乗り出す村も出てきた。
病院やスーパーへ
利用者を乗せて、雪道を走行する自動運転車(秋田県上小阿仁村で)=国土交通省能代河川国道事務所提供
秋田県のほぼ中央の山間部に位置する人口約2100人の上小阿仁(かみこあに)村。少子高齢化が進む同県の中でも最も高齢化率が高く、65歳以上が半数を占める。年金暮らしでマイカーを持たない世帯も目立つ。
「村内にタクシー会社はなく、助け合いの精神が大事となります」と、NPO法人「上小阿仁村移送サービス協会」事務局の萩野芳紀さん(73)は言う。
同協会は、主婦や元タクシー運転手、農家などの村民にドライバーになってもらい、マイカーで高齢者らを村外の病院やスーパーに送迎するサービスを実施している。入会金200円、年会費800円で、行き先ごとに定額の利用料を設定。2005年12月からスタートし、20年の利用者数は延べ404人だった。
さらに19年11月からは、同協会が主体となり、全国で初めて自動運転サービスの本格運用を開始した。7人乗りの自動運転車が、路面に埋設された電磁誘導線に沿って時速約12キロで走行。運賃200円で村役場や郵便局などを結ぶ3ルートがあり、21年10月には延べ228人が利用した。
萩野さんは「雪道でも順調に運行しており、高齢の村の日常生活に欠かせない存在になっている」と話す。
法改正
タクシーやバスのように有料で客を輸送する車両を運転する場合、第2種運転免許が必要だが、06年の道路運送法の改正で、▽過疎地などの移動手段を確保する交通空白地輸送▽障害者らを対象にした福祉輸送――であれば、国に登録すれば2種免許がなくても有償で送迎できる制度が導入された。
国土交通省によると、交通空白地輸送の登録は635団体、福祉輸送の登録は2502団体(いずれも21年3月末時点)に上る。