急拡大が続く感染状況…専門家の見解は

FNNプライムオンライン
国内の新型コロナウイルスの感染者は20日、累計で200万人を超え、オミクロン株の感染拡大により東京都で8600人超の感染が確認されるなど28都道府県で過去最多となった。21日からは沖縄などに続き東京などでもまん延防止等重点措置が適用された。
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急拡大が続く感染状況について、厚生労働省クラスター対策班の古瀬祐気医師に話を聞いた。古瀬医師は新型コロナやエボラ出血熱など国内外で感染症の研究や対策にあたり、国のクラスター拡大防止の助言などにあたっている。
ーーオミクロン株の感染拡大について
予想外ではなくて予想できていたことでした。若い世代の多くがワクチンを接種した直後だった去年10月頃をピークにして、その後、徐々に集団として保持している免疫の効果が下がってきたので、オミクロン株でなかったとしても、この冬にはおそらく第6波がくるだろうと思っていました。
ウイルスには、さまざまな変異が絶えず起こっています。オミクロン株のように世代期間(感染者自身が感染してから次の感染者に感染させるまでの期間)が短くなるもの、ほかにも病原性が高いもの、逆に人の死には至らないものなどランダムにいろいろなパターンのウイルスが生まれていって、ほとんど失敗するんですね。もちろんウイルスに意思はありませんが、競争に勝ち残れなかったウイルスは消え、残ったものが私たちの前に現れているわけです。
感染力は「強い」のではなく「速い」
ーーオミクロン株は「感染力が強く重症化しにくい」と言われているが
重症化率については、もしワクチンを打っていない状況で感染したとするとオミクロン株は30~50%程度、デルタ株と比べて重症化リスクが下がるとみられています。ただそれよりも影響として大きいのは、オミクロン株はワクチンを打っていても感染してしまうような変異を持っていて、感染者に占めるワクチン接種者の割合がデルタ株のときと比べて高くなっています。
一方でワクチンによる重症化予防効果はオミクロン株に対してもある程度保たれているため、感染者全体に対して重症化する人の割合は相当に小さく見えるというのが、オミクロン株の現状です。
また感染力については「強い」ということでなく、感染のスピードが「速い」ということはいえます。その理由は世代期間が短くなっているからです。
例えば6日間かけて6人にうつるウイルスがあるとすると1人が何人に感染させるかという再生産数は6になります。一方、2日間で2人にうつすウイルスがあるとすると再生産数は2となりますが、4日目には4人、6日目には8人が感染することになります。2乗3乗4乗と増えていくわけで、再生産数が小さいとしても世代期間の短いウイルスのほうが速く感染が拡がることになりますが、オミクロン株はこうした特性を持っています。
ーー世界の感染状況をどう見ているか
アメリカやイスラエルなどでは、オミクロン株が主体の流行であるのにも関わらず、医療にかなりの負荷がかかってきていると聞いています。アメリカでは100万人以上の新規陽性者が出ている日もあります。さすがにその数になったら重症化率が低いとはいえ、病院のベッド使用率は高くなり、厳しい状況になるでしょう。
世代期間が短くなったというオミクロン株の特徴から、早くピークに達して早く下降するということが理論的にわかっています。ただ何も対策をしなければおそらく日本でも医療の提供体制は逼迫してしまうでしょう。
南アフリカでは1ヶ月ほどでピークが来て、今は感染者が減ってきていますが、何も対策せずに下がったわけではありません。南アフリカはオミクロン株による感染拡大が起こった初期から強い対策を打っていますし、これまでにベータ株とデルタ株でかなり大きな感染の波を経験したことで、おそらく人口でいうと数10%が自然に感染していて免疫を持ってる可能性があります。加えて、ワクチンも30%程の人がすでに接種してます。
ヨーロッパでもドイツ・オランダ・ポルトガルなどは、かなり強い対策を取って流行の制御を試みています。