ある日、夫の姿が忽然と消えました
国外退去を命じられ、仮放免中だったトルコ人の男性。日本人の妻を残して突然、強制送還されました。別れの挨拶もできないまま、引き裂かれた夫婦の思いとはー
SS:-大阪府内 2月- トルコへの引越しの準備をする佳織さん(仮名・40代)
「長いこと帰って来られそうにないから、診察券も全部処分して・・・」
夫がいるトルコに引っ越すことになった佳織さん(仮名・40代)。突然の出来事でした。
「(夫から)泣いて電話かかってきて、『連れていかれた』と」
ムラット・オルハンさん(37歳)と妻の佳織さん(仮名・40代)
夫のムラット・オルハンさん。先月突然、強制送還されました。
「私、帰らない。奥さんがいるから帰らない」
「(入管職員に)無理やり。暴力ですよ、暴力」
入管で一体、何が起きたのか。
(ムラットさん)「寂しいですね」
(佳織さん)「寂しい。会いたい早く」
互いを支え合い、引き裂かれた一組の夫婦の物語です。
ムラットさんは惜しみなく佳織さんに愛情を注いでくれました
(佳織さん)「私は座って(食事を)待っていただけです。彼がトルコの『アイラン』というヨーグルトのドリンクを作ってくれたり、から揚げを作ってくれたり・・・」
友人を通じて知り合った佳織さんとムラットさん。4年前に結婚しました。
(佳織さん)「過保護なくらいによくしてくれて、ごはんが終わったら、『あっち行っていいよ』と流し台もきれいに拭くんですよね」
大阪出入国在留管理局
持病がある佳織さんを支え、家事を一手に担っていたムラットさん。2015年に来日した際、過去のオーバーステイによる上陸拒否期間中だったため、大阪入管に収容されました。
収容は3年半にわたった。収容当時のムラットさん(2017年 弁護団提供)
(入管職員)「(怒声)」「足を押さえろ、しっかり押さえろ!」
収容されていた当時、ムラットさんは職員に押さえつけられ、右腕を骨折しました。
国と和解後の会見(大阪市内 2020年)
裁判を起こした結果、国は謝罪し、『収容者の人権を尊重する』として和解が成立。異例の対応でした。
(ムラットさん)「もう一回、そんな問題が起きないために私は裁判をやったんです。だからこれから、大阪入国管理局、外国人に暴力しないでください」
2人の幸せな時間は長くは続きませんでした
裁判中に「仮放免」を受けたムラットさん。就労禁止など様々な制限がある中、夫婦は穏やかで幸せな日々を紡いでいきました。この先も、夫婦でともに日本で暮らしたい。ムラットさんの在留資格を求めて、2人は何度も申請しましたが、認められることはありませんでした。