
2月、モスクワで記者会見するロシアのプーチン大統領(ロイター=共同)

2016年12月、チェリャビンスクでプーチン大統領(左)と話すチュバイス氏(ゲッティ=共同)

ナビウリナ氏(ロイター=共同)

ウクライナ首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで親戚の遺体を確認し泣く女性=4月13日(ゲッティ=共同)

スルコフ氏(ゲッティ=共同)

ナルイシキン氏(ゲッティ=共同)
ロシアのプーチン政権がウクライナ侵攻後、ますます独裁色を強めている。侵攻に反対するリベラル派の主要人物は相次いで政権を去る一方、ウクライナ問題を担当していた情報機関側近は逮捕され、「プーチニズム」を演出し政権の中核にいたスルコフ氏拘束の情報も流れた。対ウクライナ強硬路線の失敗を部下に負わせたとの指摘もある中、その「暴走」を止める勢力はもはやない。独立系メディアの報道などを基に、ロシア政界の現状を追った。(共同通信=太田清)
▽リベラル派が次々と…
2月24日の侵攻前日に、大統領特別代表(国際協力担当)のチュバイス氏が辞任したことが明らかになった。同氏はエリツィン政権時代、第1副首相、大統領府長官など要職を歴任。間接的ながらプーチン氏が大統領府で働くきっかけを作り、プーチン政権下では長年、国営電力企業社長を務めた。リベラル系政党「右派連合」幹部も務め、政権内で数少ないリベラル派だった。侵攻に同意できなかったことが理由とみられる。その後、イスタンブールの空港で姿が確認されて以降、動向は不明だ。
リベラル派では、ロシアの先端技術開発を担う「スコルコボ財団」の代表ドボルコビッチ元副首相も辞任した。米メディアに対し反戦発言を行ったことで、与党議員などから辞任を要求されていた。同氏は経済担当の大統領補佐官、副首相などを歴任した。
また、ブルームバーグ通信などによると、ロシアの銀行システム近代化に大きな役割を果たし、ロシアのベストバンカーとして国際的な評判も高いナビウリナ中央銀行総裁も侵攻後に辞意を表明。プーチン大統領の説得により、その後撤回したという。
▽インナーサークルにも異変
以上、挙げた人物たちはいずれもロシアの経済分野を中心とするリベラル派だが、政権の中核を担う軍・情報機関出身の「シロビキ」で構成されるインナーサークルでも異変が起きている。
英紙タイムズによると、侵攻前にウクライナについて正確な情報を提供しなかったとして旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後継機関、連邦保安局(FSB)の職員150人が解任された。いずれも、ウクライナなど旧ソ連構成国への政治工作などを担当する第5局の職員で、虚偽情報とはウクライナ軍の抵抗や同国の政治体制などについての間違った情報を指すと思われる。第5局は1998年にプーチン大統領がFSB長官だった際に前身組織が創設された。