国公立大2次試験の前期日程に臨む受験生=2月25日、東京都文京区の東京大[代表撮影]【時事通信社】
筆者は学生時代、国公立大学の大学生は真面目に勉強している一方、私立大学文系の学生は「遊んでばかりで勉強していない」というイメージを持っていた。60歳となり、年齢を重ねて分かったが、実際は人それぞれ。企業などには「とがった人材を採用したい」という声も多いが、一方で「真面目な人が欲しい」というのも本音だろう。本稿では、そのイメージを利用して、地方国公立大学への進学メリットを考えてみる。(時事通信解説委員 内部学)
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地方大学は就職に不利か?
「地方にいると就職活動に不利」という声をよく聞く。交通費や宿泊費がかさむことや知名度の低さによるものだが、新型コロナウイルス禍によってリモート面接が浸透したことで、交通費や宿泊費の問題はコロナ前に比べ軽減された。知名度は、筆者はあまり関係ないと考えている。官公庁・企業の採用担当者や経験者に聞いた限りでは、官公庁も企業も多様な学生を採用しようとしている。大都市の有名大学だけではなく、全国のさまざまな大学の学生に来てもらいたいと考えているようだ。
「そうは言っても、実際に地方国公立大学からは有名企業に就職できていないのでは」という声もあるが、首都圏の学生が首都圏の企業に勤めたいと考えるのと同様、地方国公立大学の学生も地元企業に就職するケースは多い。そもそも学生数が少ない上、首都圏に多い有名企業へのエントリー人数が少なければ、就職者数は必然的に少なくなる。だから、有名企業への就職者数が少ない。しかし、日立製作所の東原敏昭会長(徳島大学)のように、地方国公立大学出身で大企業のトップに上り詰めた人もいる。当たり前の話だが、社会人になってからは、出身大学は関係ないのである。
ところで、「地方国公立大学に進学すると下宿代が掛かるため、自宅から私立大に通う方が安い」という意見も根強い。全国大学生活協同組合連合会の調査(2020年)では、仕送り額の平均は月7万410円。授業料と合わせると年間約140万円になる。総務省の家計調査(同年)から推計すると、自宅通学生も毎月食費や光熱費に2万~3万円掛かる。さらに、小遣いや交通費を合わせると4万~5万円程度は必要だ。私大の自宅通学生と比べると、文系でほぼ同額、理系だと地方国公立大の方が安くなる。さらに、保護者の収入が激変した場合の授業料減免も国公立大の方が恵まれている。
「せっかくの大学生活。地方だと刺激がない」と思う人もいるだろう。こればかりは、本人次第。都会で生まれ育った学生にとっては、違う文化に触れることは大きな経験になると信じたい。